子供の成長とともに生え変わり、永久歯へと置き換わっていく乳歯。

『乳歯が虫歯になっても、永久歯に生え変わるのだからあまり問題ない』と思っている人もいるのではないでしょうか?

しかし、乳歯が虫歯になると永久歯に影響を与えるだけでなく、子供の成長や発育にも悪影響を及ぼす可能性があります。

今回は、乳歯が生える時期や順番、乳歯が虫歯になることのリスク、乳歯の健康を守るためにやるべきことについて詳しく解説します。

監修医師 デンタルクリニックビジュー院長 橘 佳苗 
橘 佳苗先生

歯学部卒業後、都内大学病院歯科口腔外科にて勤務。麻酔科研修を経て総合病院口腔外科・一般歯科にて口腔外科学会認定医として従事する。その後、2014年にデンタルクリニックビジューを開院。オーラルケアに関する事だけではなく、栄養学、漢方など幅広い視点で患者様の健康をサポートしている。現在は、一児の母としての経験を活かし、子供の歯やお口の健康についても積極的に情報を発信している。

目次

乳歯の特徴

乳歯と永久歯の比較
まずは乳歯の特徴からみていきましょう。
乳歯と永久歯は、本数、色、サイズ、歯質などさまざまな点で大きく異なります。

乳歯は永久歯に比べて歯質が柔らかくエナメル質や象牙質は約半分の厚さしかありません。

そのため、乳歯は虫歯になりやすく、一度虫歯が進行すると神経まですぐに到達してしまいます。

乳歯が生える時期・順番

乳歯
乳歯は生後6〜7ヶ月頃になると、下の前歯(乳中切歯)が生え始め、次に上の前歯(乳中切歯)、両隣りの上下の歯(乳側切歯)が生え、上下合わせて8本になります。

1歳6ヶ月頃には奥歯(第一乳臼歯)が、1歳8ヶ月頃には奥歯の前の歯(乳犬歯)が生えてきます。
2歳頃になると、一番奥の奥歯(第二乳臼歯)が生え、3歳頃に20本の乳歯が生え揃うのが一般的です。

乳歯が生える前や生え始めたばかりの赤ちゃんは、歯茎がむずがゆい、痛いなどの不快感を感じ、機嫌が悪くなることがあります。
そのため、いつもよりぐずったり、泣き叫んだりすることが多くなるかもしれません。

また、歯茎のむずがゆさを解消するために、なんでも口に入れて噛もうとするようになります。おもちゃや服、自分の手など、何でも噛んでしまうので注意が必要です。

乳歯が永久歯に生え変わる時期・順番

永久歯

6〜7歳頃になると、第一大臼歯と言われる永久歯が一番奥の奥歯(第二乳臼歯)の後ろに生えてきて、下の前歯(中切歯)も生え変わります。
第一大臼歯が生えてくる時期と下の前歯の生え変わりの時期はほとんど変わらないため、順番が前後することも珍しくありません。

次に、上の前歯(中切歯)、上下の側切歯が生え変わり、その後、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯が生え変わっていき、12歳頃にすべての乳歯が永久歯に変わります。

11〜13歳頃には、第一大臼歯の奥に第二大臼歯という新しい永久歯が生え、17〜21歳頃に親知らず(第三大臼歯)が生えてくる人もいます。

歯が生える時期には個人差がある

一般的には、生後6〜7ヶ月頃に下の前歯が生え始め、2歳半頃までに20本の乳歯が生え揃うと言われています。
しかし、中には生後4ヶ月前から歯が生え始めたり、1歳を過ぎてもまだ生えてこなかったりすることもあります。

歯が生える時期には個人差があるため、多少のズレであれば心配する必要はありません。
ただし、大幅に時期がズレている場合は、早めに歯科医院で相談することをおすすめします。

乳歯が虫歯になることのリスク

ここからは、乳歯が虫歯になることのリスクを4つ紹介します。

永久歯が虫歯になりやすくなる

乳歯に虫歯がある場合とない場合とでの永久歯が生えてからの虫歯の数

3~5歳の子供を対象にした調査によると、乳歯に虫歯がない子供に比べて、虫歯がある子供は5年後の永久歯の虫歯数が多く、虫歯リスクが約5倍になるという結果が出ています。

これは、虫歯になった乳歯を放置しておくと、口腔内の虫歯菌が増えてしまい、次に生えてくる永久歯に感染しやすくなるためです。

永久歯の歯並びが悪くなる

乳歯の虫歯は、永久歯の歯並びを悪化させる可能性があります。
具体的には、以下の2つの影響が考えられます。

永久歯が生えてくるスペースが狭くなる

乳歯が虫歯で早く抜けてしまうと、隣の歯が傾いてきて、永久歯が生えてくるスペースが狭くなります。
その結果、永久歯が重なって生えたり、歯並びが悪くなったりすることがあります。

永久歯が真っ直ぐに生えてこない

乳歯が虫歯でなかなか抜けなかったり、神経まで侵されてしまったりすると、永久歯が真っ直ぐに生えてこられないことがあります。
これは、虫歯菌が永久歯の芽に影響を与えてしまうためです。

虫歯による歯並びの悪化は、見た目だけでなく、噛み合わせにも悪影響を及ぼします。

永久歯の発育が妨げられる

虫歯が重症化すると、歯の根の先に膿が溜まり、腫れたり痛みが生じたりする『根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)』という病気を引き起こすことがあります。

乳歯が根尖性歯周炎になると、乳歯のすぐ下に埋まっている永久歯に影響を与え、白い斑点や凹みなど、色や形に異常がみられる永久歯が生えてきやすくなります。
歯の表面にあるエナメル質が正常に形成されず、虫歯菌が入り込みやすい永久歯になってしまうこともあるので注意が必要です。

子供の成長や発育に悪影響を及ぼす

虫歯は、子供の成長や発育に悪影響を及ぼす可能性があります。
具体的には、以下の3つの影響が考えられます。

偏食になりやすい

虫歯が進行すると、歯ぐきの腫れや痛みが生じ、歯応えのある食べ物を嫌がるようになります。そのため、柔らかいものばかり食べたり、よく噛まずに飲み込んだりしてしまうようになり、偏食になりやすくなります。

偏食は、栄養不足につながり、子供の成長や発育に悪影響を及ぼす可能性があります。

顎の成長が遅れる

食べ物をよく噛むことは、顎の成長に欠かせません。
しかし、虫歯によって「柔らかいものばかり食べている」「よく噛まずに飲み込んでしまう」「片方の歯で噛む癖がついている」といった状態になると、咀嚼機能や顎の発達が遅れてしまいます。

顎の発達が遅れると、歯並びや顎のバランスが悪くなったり、口の自浄作用が低下して他の歯も虫歯になりやすくなったりすることがあります。

言葉の発達が遅れる

食べ物をよく噛むことは、言葉の発達にも関係しています。

咀嚼することで、舌や口周りの筋肉が鍛えられ、言葉の発音がスムーズになります。
しかし、虫歯によって咀嚼機能が低下すると、言葉の発達が遅れる可能性があります。

乳歯の健康を守るためにやるべきこと

ここでは、乳歯の健康を守るためにやるべきことを5つ紹介します。

毎食後しっかり歯磨きする

最初の乳歯が生えてきたら、歯磨きを始めるようにしましょう。
まずは、歯磨きの姿勢や歯ブラシの感触などに慣れさせることが大切です。

歯が生え揃ってくると、奥歯の溝や歯と歯の間、歯と歯ぐきの間に汚れが残りやすくなります。
乳歯の虫歯は白いことが多く、『痛みが出にくい』『進行が早い』といった特徴もあるため、気づかないうちに重症化していることも少なくありません。

毎食後しっかりと歯磨きをする習慣を作り、虫歯の原因となる歯垢を除去しましょう。
子供は磨き残しやすいため、永久歯が生え揃うまでは、大人が仕上げ磨きをしてあげることが大切です。

\仕上げ磨きのやり方についてはこちら/

甘いおやつやジュースを控える

虫歯になりにくいおかし

虫歯菌は糖分をエサにして増えるため、甘いものを摂取することが多いと虫歯リスクも高まります。
とくに、チョコレートやキャラメル、アメ、グミなど、歯にくっつきやすいものや口腔内に長く留まるものは虫歯が発生しやすくなります。

甘いおやつやジュースは控えて、乳製品やせんべい、野菜スティック、フルーツ、水、麦茶など、虫歯リスクが低いおやつや飲み物をあげるようにしましょう。

食器や箸を共有しない

生まれたばかりの赤ちゃんには虫歯菌はいません。
ところが、家族で食器や箸を共有したり、親が口移しで食べ物をあげたりすることで、子供に虫歯菌が移ってしまうことがあります。

虫歯菌は唾液を介して感染するため、赤ちゃんと食器や箸は共有しないようにしましょう。
他にも、『子供に与える食べ物の温度を口で確かめる』『フーフーと息を吹きかけて食べ物を冷ます』『キスをする』といった行為も、虫歯菌が移る可能性があります。

虫歯菌の感染リスクを完全になくすのは難しいですが、なるべく大人の唾液がつかないように注意することが大切です。

家族全員の口腔ケア

先述した通り、虫歯菌は周りの大人から感染することがほとんどです。
乳歯の虫歯リスクを減らすためには、家族全員が口腔ケアを行い、健康な口内環境を維持することが大切です。

虫歯がある場合は早めに治療を受けて、毎日の歯磨きや定期的な歯科健診を徹底しましょう。

定期的に歯科医院で検診を受ける

乳歯の健康を守るには、セルフケアとあわせて、定期的に歯科医院で検診を受けることが大切です。

検診を受けると、口内環境や虫歯の有無、歯ぐきの状態などを確認でき、虫歯の早期発見につながります。
また、歯医者さんから歯磨きのやり方や虫歯予防方法を教えてもらうことができるため、乳歯の健康を守りやすくなります。

多くの自治体では、 1歳半前後・2歳前後・3歳前後の乳幼児を対象に、無料の歯科健診が行われています。
乳歯が生え始めたら、自治体の歯科健診に参加して、その後は3〜6ヶ月に1回の頻度で、歯科医院で検診を受けるのを習慣にするのがおすすめです。

乳歯の頃から口腔ケアをしっかりすることが大切!

乳歯の頃から口腔ケア

乳歯が生えてる期間は6〜10年程度と短いですが、虫歯になると永久歯にも悪影響を与えます。

一生付き合っていく永久歯を守るには、乳歯の頃から口腔ケアをしっかりすることが大切です。

今回紹介した『乳歯の健康を守るためにやるべきこと』を参考に、虫歯のない口内環境を目指してくださいね!

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