おしりに赤いブツブツができたり、ただれたりする『おむつかぶれ』。
おむつかぶれは、赤ちゃんにとって不快なだけでなく、放置すると悪化してしまうこともあります。
この記事では、小児科医監修のもと、おむつかぶれの原因や症状、ご自宅でできる正しい対処法を解説します。
2009年奈良県立医科大学医学部卒業後、神戸大学大学院医学研究所小児科学分野に入局。
2023年から現職。小児科専門医およびアレルギー専門医の資格を持つ。
新生児から思春期の心の疾患まで幅広く診療している。3児のパパとして、子育て経験も豊富。
岡本先生の監修した記事一覧
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「おむつかぶれ」とは
おむつかぶれは医学用語で『おむつ皮膚炎』といい、おむつに触れている皮膚に起きる炎症のことです。
おむつかぶれになると、どのような症状が起こるのかチェックしてみましょう。
おむつかぶれの症状
おむつかぶれの初期症状は、皮膚がうっすら赤くなったり、おしりにポツポツとした湿疹ができたりします。
かゆみやヒリヒリとした痛みが伴うため、発症するとぐずりやすくなったり、おしりを拭いたときに泣いたりする場合があります。
悪化すると赤みや湿疹の範囲が広くなり、ただれて赤みが増していきます。
重度になると、ただれた部分に水疱ができて皮が剥け、ジクジクした傷になり、痛みも強くなるので注意が必要です。
カンジダ性皮膚炎・アトピー性皮膚炎との見分け方
赤ちゃんの皮膚に炎症が起きているときは、他の病気の可能性もあります。
ここでは、おむつかぶれと症状が似ている『カンジダ性皮膚炎』と、『アトピー性皮膚炎』の見分け方を紹介します。
【カンジダ性皮膚炎】
おむつの中が高温多湿な状態が続くと、カンジダというカビ(真菌)が繁殖して、カンジダ皮膚炎(乳児寄生菌性紅斑)を発症することがあります。
カンジダ皮膚炎の症状はポツポツとした小さな発疹やただれ、腫れ、かゆみなどで、おむつかぶれの症状と似ています。
おむつかぶれとの違いは、カンジダ皮膚炎はおむつがあたっていない部分にも症状が現れることです。
ただし、おむつかぶれとカンジダ皮膚炎は併発しやすく、判別が難しいケースも少なくありません。
カンジダ皮膚炎は、検査と抗真菌薬による治療が必要です。
おむつかぶれの治療はステロイド薬で治療することもありますが、カンジダ皮膚炎にステロイド薬を使うと悪化するので注意しましょう。
【アトピー性皮膚炎】
アトピー性皮膚炎は、皮膚の赤みやかゆみ、乾燥、ブツブツとした湿疹などの症状が起こり、良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気です。
アレルギーを起こしやすい体質であることが要因とされており、肌のバリア機能が弱く、外部刺激に敏感なことも発症の原因と考えられます。
おむつかぶれとの大きな違いは、アトピー性皮膚炎は全身に症状が現れることです。
赤ちゃんの場合、顔や頭、首などに症状が現れやすく、その後全身に広がっていく傾向があります。
おむつかぶれの原因
ここでは、おむつかぶれの主な原因を4つ紹介します。
原因はひとつではなく、さまざまな要因が重なって発症している場合もあります。
おしっこ・うんちによる刺激
おしっこには、体内の老廃物やアンモニアが含まれています。
アンモニアは時間が経つとアルカリ性に傾き、肌のpH値を上昇させます。肌が弱酸性の状態からアルカリ性に傾くと、バリア機能が低下し、刺激を受けやすくなります。
うんちには、腸内細菌や消化酵素が含まれています。消化酵素はアルカリ性の環境で活性化し、皮膚を刺激します。
おしっことうんちが混ざった状態が続くと、細菌がさらに増殖し、炎症やかゆみ、発疹などの症状を引き起こします。
体調不良
体調不良でうんちが緩くなっているときは、通常のうんちのときよりもおむつかぶれを起こしやすくなります。
下痢性のうんちは、通常のうんちよりも腸の分泌液や消化酵素を多く含んでいるため、刺激性が高いからです。
緩いうんちは広範囲を汚しやすく、水分が多いので蒸れにもつながりやすいです。
おむつ内の蒸れ
おしっこやうんちをした後、おむつの中は高温多湿状態になり、おしりがあっという間にふやけてしまいます。
ふやけたおしりは、少しの刺激にも敏感なため、おしっこやうんちに含まれるアンモニアや酵素で炎症を起こしやすい状態です。
特に暑い夏や、赤ちゃんが活発に動く時期は、汗をかいておむつの中が蒸れやすくなるので注意が必要です。
また、最近の紙おむつは、吸収力が向上している分、表面がサラサラでも、内部は蒸れていることがあります。おむつ表面が乾いていても、こまめに交換してあげましょう。
摩擦・刺激
赤ちゃんの肌は刺激に弱いため、おむつが肌に擦れたり、おむつ替えのときに刺激を与えたりするとおむつかぶれになることもあります。
とくに、おむつのギャザーがあたる部分は肌に密着しているので、おむつかぶれが起きやすいです。
- おむつのサイズが小さい
- おむつの素材が肌に合っていない
- おしり拭きでゴシゴシ拭いている
といったことが原因になりやすいので、おむつかぶれになったときは、おむつやケアのしかたを見直してみましょう。
おむつかぶれを防ぐ!おむつ替えのポイント
ここでは、おむつかぶれの予防に役立つ、おむつ替えのポイントを紹介します。
排泄をしたらすぐにおむつを取り替える
個人差はありますが、赤ちゃんは生後3ヶ月頃までは1日15〜20回程度、6〜12ヵ月頃は10〜16回程度排泄をします。
排泄物の刺激やおむつ内の蒸れがおむつかぶれの原因となるため、こまめにおむつが濡れていないかチェックしましょう。
赤ちゃんが排泄していたら、すぐにおむつを取り替えてあげるとおむつかぶれを防ぎやすくなります。おしっこで濡れると、色が変わってお知らせしてくれる紙おむつを使うのもおすすめです。
霧吹き(ミストスプレー)で汚れを洗い流す
おむつ替えをするときは、摩擦による刺激を与えないこと、排泄物をしっかりと落とすことがおむつかぶれの予防になります。
ゴシゴシ拭いて排泄物を落とそうとするのはNGです。
まずは、ぬるま湯を入れた霧吹き(ミストスプレー)で、おしりについた排泄物を落としてあげましょう。
500mlのペットボトルにシャワーキャップをつけたものや、プラスチックの醤油ボトルにぬるま湯を入れたものを使って、おしりを洗い流す方法もあります。
排泄物を落としたら、水分をたっぷりと含んだ柔らかい布やおしり拭きシートなどで、上から下に向かって優しく拭き取りましょう。
最後に、柔らかいタオルで優しく押して水分を吸い取ります。
おしりを乾かす
水分を拭き取った後は、おしりを完全に乾かしてから新しいおむつを履かせましょう。扇風機やうちわであおぐのも効果的です。
また、1日中おむつをつけっぱなしだと蒸れやすくなるため、室温を調節して、少しの間おしりを空気にさらしたり、日光浴させたりするのも良いでしょう。
保湿する
おむつかぶれを防ぐには、おむつ替えの際に肌を保湿してあげるのもポイントです。
おしりが清潔になったら、赤ちゃん用のクリームやオイルなど油分が多い保湿剤をたっぷり塗って肌を保護してあげましょう。
保湿剤をしっかりと塗ることで、バリア機能を高め、刺激から肌を守る効果が期待できます。
おむつかぶれの正しい対処法を小児科医が解説!
皮膚科または小児科を受診する目安はありますか?
おしりの一部が赤いだけであれば、市販の保湿クリームやワセリンでも対応できます。しかし、おしりが広範囲にかけて赤いときや、または一部であっても「ザラザラ」や「ジュクジュク」がある場合は、皮膚科または小児科を受診しましょう。
小児科であれば、予防接種のついでに相談することもできます。
おむつかぶれにワセリンは効きますか?
ワセリンはおむつかぶれの「予防」に効果的です。おむつかぶれを防ぐために、おしりがきれいなうちからワセリンで保護するとよいでしょう。
おむつかぶれを起こしてしまったときは、「ザラザラ」や「ジュクジュク」がなく部分的に赤いだけのおむつかぶれであれば、ワセリンだけでも治ることはあります。
ただし、1週間塗り続けてもおむつかぶれが良くならないときは、皮膚科または小児科を受診しましょう。
おむつかぶれにベビーパウダーは効きますか?
ベビーパウダーは皮膚を乾燥させるのでおすすめできません。
近年は保湿による湿疹予防効果が評価されており、ベビーパウダーよりも保湿剤のほうが推奨されています。
おむつかぶれにはステロイドを使った方が良い?
最近の研究で、赤ちゃんの湿疹に対する早期の積極的治療が、食物アレルギーの発症を予防することが分かりました。
湿疹の一種であるおむつかぶれも早期に積極的に治療することが良いと考えられます。
ステロイドの副作用が心配という方もいますが、適切なレベルのステロイドを適切な期間使用することで、副作用のリスクを減らすことが可能です。
正しくケアして赤ちゃんのおむつかぶれを防ごう!
赤ちゃんのお肌は想像以上にデリケートです。少しの刺激や蒸れでも、すぐにトラブルを起こしてしまいます。
おむつかぶれは、かゆみが不快なだけでなく、放置すると悪化して皮膚炎になってしまう可能性があるので注意が必要です。
大切なのは、日頃の正しいケアです。
今回紹介した内容を参考に、こまめなおむつ替えや保湿などを行い、おむつかぶれを防ぎましょう。
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