赤ちゃんが授乳後に何度も吐き戻したり、お腹がパンパンに張っていたりする場合は、「過飲症候群(かいんしょうこうぐん)」かもしれません。

今回は小児科医監修の元、過飲症候群の意味や原因、新生児のミルクの飲み過ぎのサイン、対策方法について詳しく解説します。

<この記事で分かること>

ミルクを飲みすぎる原因・・・赤ちゃんは満腹中枢が未発達のため注意が必要!

ミルク飲み過ぎのサイン・・・飲み過ぎのサインは6つ!見逃さないことが大切

ミルクの飲み過ぎを防ぐ方法・・・泣いているからとすぐにミルクを与えるのはNG!

監修医師 獨協医科大学医学部 小児科学教室 非常勤助教 塚田 佳子

塚田 佳子

獨協医科大学医学部卒業。
同大附属病院勤務(小児神経外来)等を経て、2020年から現職。
小児科専門医、子どもの心の専門医。
けいこ豊洲こどもクリニック院長。
パークタワー勝どき小児科院長。

目次

ミルクを飲み過ぎる「過飲症候群」とは

「過飲症候群」とは、赤ちゃんがミルクを飲み過ぎてしまうことで起こるさまざまな症状のことです。
別名「飲み過ぎ症候群」とも呼ばれています。

新生児の赤ちゃんは、お腹いっぱいになったことを感じる「満腹中枢」がまだ発達していません。口の周りに何か触れると自然に口に入れて吸ってしまう「哺乳反射」の影響もあり、ついつい飲み過ぎてしまうことがあります。

また、赤ちゃんが泣くと「お腹が空いた」と心配になり、頻繁にミルクを与えてしまうことも、過飲症候群の一つの原因と考えられています。
過飲症候群は病気ではないため、飲み過ぎを防ぐ対策をとることで多くの場合、症状が改善します。

<過飲症候群の症状>
  • よく泣く
  • いきむ
  • 吐き戻しが多い
  • ゼコゼコ音や鼻づまり
  • お腹が張る
  • ゆるいうんち・便秘
  • 50g/日以上の増量

ミルクを飲み過ぎるとどうなる?【飲み過ぎのサイン】

ここでは、ミルクを飲みすぎた時の代表的なサインを紹介します。

ミルクを飲んだ後にうなる・泣く・いきむ

ミルクを飲みすぎると、苦しそうにうなったり、泣いたりすることがあります。
授乳後にぐずって寝てくれない、うんちをするときのようにいきむといった場合も飲み過ぎのサインの可能性があるでしょう。

吐き戻しが多い

赤ちゃんは、胃の形が大人のように横長ではなく縦長で小さいため、授乳後にミルクが食道に戻ってしまい、吐き戻してしまうことがあります。
また、胃と食道の間の筋肉がまだしっかりしていないことも、吐き戻しの原因の一つです。

吐き戻しはよくあることですが、特に横に寝かしたときに大量に吐き戻す場合は、ミルクの飲み過ぎが考えられます。

ゼコゼコ音・鼻づまり

赤ちゃんがミルクを飲み過ぎると、胃が膨らみ、横隔膜が押し上げられることで、気道が圧迫され、呼吸が苦しそうに聞こえる場合があります。
風邪と勘違いしやすい症状ですが、ミルクの飲み過ぎの場合があるので注意が必要です。

抱っこをすると身体がそる・お腹が張る

ミルクを飲み過ぎると、胃がパンパンに膨れてしまい、お腹が硬くなることがあります。

お腹が張って出べそになったり、抱っこをすると呼吸が苦しくなって体が反り返ったりすることもあります。

ゆるいうんち・便秘

赤ちゃんは、腸が大人に比べてまだ未熟なため、ミルクを飲み過ぎるとお腹がゆるくなってしまうことがあります。
特に、母乳を飲んでいる赤ちゃんは、ミルクを飲んでいる赤ちゃんよりもうんちがゆるいことが多いです。飲み過ぎが続くと、腸に負担がかかって便秘になったり、うんちやおしっこの量が増えたりすることもあります。

赤ちゃんは、うんちの状態が日によって大きく変わるため、普段からうんちの色や硬さ、回数などをチェックしておくと、何か異変があった時にすぐ気づくことができます。

\赤ちゃんのうんちの色・排便回数についてはこちら/

1日あたり体重が50g以上増える

厚生労働省が発行している「乳幼児身体発育マニュアル」 では、乳児期に期待される体重増加量は以下のように記載されています。

乳児期の体重増加量
  • 0~3ヶ月:25~30g/日
  • 3~6ヶ月:15~20g/日
  • 6~12ヶ月:10~15g/日

参考:乳幼児身体発育 評価マニュアル

過飲症候群の赤ちゃんは、1日あたりの体重が50g以上増えることが多いです。
体重の増加量は個人差がありますが、急激に体重が増えている場合はミルクを飲み過ぎているかもしれません。

ミルクの飲み過ぎを防ぐ対策

過飲症候群の症状がある場合は、授乳方法や赤ちゃんへの対応を見直してみましょう。ここでは、ミルクの飲み過ぎを防ぐ対策を紹介します。

適切な授乳間隔で適量を与える

過飲症候群の症状があるときは、適切な授乳間隔で適量のミルクを与えることが大切です。

<母乳の場合>

母乳の場合、新生児期の授乳回数は1日8〜15回程度、授乳間隔は2〜3時間おきに1回が目安です。母乳は赤ちゃんが飲んだ量がわかりにくいですが

  • 授乳回数が1日8回以上ある
  • おしっこが1日6回以上出ている

といった状態であれば、適量と考えられます。

また、母乳は出始めは脂肪分が少なく、乳房が空の状態に近づくと脂肪分を多く含んだ母乳が出てきます。母乳の出が良すぎると脂肪分が多い母乳が出る前に赤ちゃんのお腹が満たされてしまい、満足感が得られずに飲み過ぎにつながることがあります。

母乳が出過ぎている場合は、授乳前に搾乳をする対処方法がありますが、搾乳しすぎると反対に母乳が増える原因となる場合もあるので注意しましょう。
4時間ごとに授乳する乳房を切り替える「片側授乳(ブロックフィーディング)」という方法もあるので、医師や助産師に相談してみてください。

<ミルクの場合>

ミルクの一般的な授乳量・授乳間隔・授乳回数の目安は、以下の通りです。

【授乳量・授乳間隔・授乳回数の目安】

授乳量授乳間隔授乳回数
生後1週間頃まで生後日数×10ml(足りない場合は+10ml)2〜3時間おき1日8〜12回程度
生後1週間~2週間頃まで60~80ml2〜3時間おき1日8〜12回程度
生後2週間~1ヶ月頃まで80~120ml2~3時間おき1日7〜8回程度

ミルクの場合、メーカーによって目安量が異なるため、使用しているミルクのパッケージに記載されている使用量や授乳回数を参考にしましょう。

泣いたからといってすぐにミルクを与えない

赤ちゃんが泣いているときは、空腹以外にも、「お腹がいっぱい」「眠い」「ゲップがしたい」「暑い(寒い)」「おむつが濡れている」などさまざまな理由があります。

空腹以外の理由で泣いていても、授乳すると赤ちゃんは反射的に飲んでしまうことがあるので注意が必要です。
泣いたからといってすぐにミルクを与えず、赤ちゃんの様子をよくチェックしてみましょう。

\新生児が寝ない原因についてはこちら/

検診の時に医師に相談する

赤ちゃんに適切なミルクの量がわからない場合は、1ヶ月健診の際に医師に相談するのがおすすめです。
赤ちゃんの健康状態のチェック、授乳方法の指導などをしてもらうことで、適切な対策をとることができます。

飲み過ぎのサインは他の病気の症状と同じものもあるため、心配なときは健診前に医師や助産師に相談しましょう。

母乳・ミルクに関する気になる質問

ここでは、母乳・ミルクに関する気になる質問と回答を紹介します。

ミルクを飲んでも欲しがる時はどうすれば良いですか?

授乳後にミルクを欲しがるときは、授乳量が足りていないことがあります。
吐き戻しやお腹の張りなど飲み過ぎのサインがなく、赤ちゃんの機嫌が良い場合は、目安量よりも少し多めにミルクを与えて様子を見てみましょう。

ミルクが2〜3時間もたない時はどうすれば良いですか?

赤ちゃんの消化機能が発達してくると、これまでの授乳量では足りなくなって2〜3時間もたなくなることがあります。
一気に授乳量を増やすと胃腸に負担がかかりやすいため、1回の授乳量に20ml程度プラスして、授乳間隔は変えずに与えましょう。

量を増やしたときは赤ちゃんの様子をよくチェックして、飲み過ぎのサインがある場合は量を調節してください。

病院で母乳の場合は欲しがるだけあげても良いと言われました。本当ですか?

母乳育児では、赤ちゃんが欲しがるだけあげる「自律授乳」が基本とされています。
赤ちゃんに吸われる刺激で母乳の分泌が促され、赤ちゃんもたくさん吸うことで上手に飲めるようになります。

ただし、泣くたびに欲しがってると思って授乳すると、飲み過ぎになる場合があるので注意しましょう。

授乳時には赤ちゃんからのサインを見逃さないようにしよう!

赤ちゃんはミルクを飲み過ぎると過飲症候群を起こしてしまうことがあるため、適切な量を与えることが大切です。
ただし、自己判断で授乳回数を減らすと栄養不足を招く恐れがあるので、医師や助産師と相談しながら調節するのがおすすめです。

飲み過ぎているときはお腹の張りや吐き戻し、急激な体重増加などの症状が現れることがあるため、授乳時は赤ちゃんからのサインを見逃さないようにしましょう。

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