「最近、赤ちゃんが寝てくれず、ぐずりもひどくて、あやしてもダメ」

原因のわからない赤ちゃんの不機嫌に、戸惑っている子育て中の親御さんはいませんか?

もしかするとそれは「メンタルリープ」の時期を迎えているからかもしれません。

この記事では子育て中の方に知ってほしい、メンタルリープについて詳しく解説します。

監修医師 高座渋谷つばさクリニック院長 武井 智昭
武井 智昭

武井 智昭

2002年 慶應義塾大学医学部卒業。2002年から2004年まで慶応義塾大学病院研修医。2004-2011 平塚共済病院 内科・小児科医長。2012年より神奈川県内のクリニックを経て、2017年なごみクリニック院長、2020年高座渋谷つばさクリニック院長(内科・小児科・アレルギー科)

武井先生の監修した記事一覧
https://kodomonosiro.jp/specialist/specialist-2054/

目次

メンタルリープとは?赤ちゃんに起こる特徴

メンタルリープとは、赤ちゃんから子どもへ成長する20ヶ月ほどの間に起こる、脳の急速な発達を指します。

メンタルリープの存在は、オランダのプローイユ博士の数十年にわたる研究で発見されました。

「メンタルリープ」というワードは、1992年にオランダで出版された育児書「ワンダーウィーク」へ掲載されましたが、専門用語ではありません。

メンタルリープが起こる時期は決まっていて、全部で10回あります。

その時期に差し掛かると、自身の急速な成長に心身が追いつかず、戸惑いや違和感からぐずるようになります。

具体的にどのような様子が子どもたちに現れるか確認しましょう。

寝ぐずりや夜泣き

赤ちゃんの頃は昼夜の判別があまりつかず、睡眠パターンも安定していない状態です。

そこにメンタルリープが重なって、赤ちゃんがストレスを感じると、なかなか寝つけず、寝ぐずりをするようになります。

夜泣きがひどい場合、鉄欠乏性貧血が隠れていることもあります。

また、生後7〜9ヶ月頃は夜泣きのピークといわれていますが、メンタルリープの影響で、より激しくなっている可能性も考えられます。

発達の一時的な後退

メンタルリープの回数を重ねていくごとに、赤ちゃんは段階を踏んで、複雑な思考や行動ができるようになっていきます。

しかし、「前の段階に戻ったのでは?」という行動をみせることもあります。

親御さんは心配になるかもしれませんが、これは一時的なことです。
そのうち元の段階に戻るのでご安心ください。

なお、体調不良やストレスでも、発達に波が出ることがあります。

メンタルリープは10回!いつ、どんなリープが来る?

前述したように、メンタルリープは10回やって来ます。

「あやしても寝ぐずりや夜泣きが止まらない」と、途方に暮れないように、メンタルリープがいつ頃来るかを把握しておきましょう。

そうすれば、「赤ちゃんが成長している証拠」と、気持ちが楽になるメリットがあります。
メンタルリープは回数によって、特徴を元にした呼び方があります。

いつ、どのように呼ばれているリープを迎えるのかは下記の通りです。

回数起こる時期呼ばれ方
1回目生後5週頃五感のリープ
2回目生後8週頃パターンのリープ
3回目生後12週頃推移のリープ
4回目生後19週頃出来事のリープ
5回目生後26週頃関係のリープ
6回目生後37週頃分類のリープ
7回目生後46週頃順序のリープ
8回目生後55週頃工程のリープ
9回目生後64週頃原則のリープ
10回目生後75週頃体系のリープ

なぜメンタルリープは出産予定日で計算する?

上の一覧表では「生後」としてメンタルリープを迎える時期を記載していますが、実際のところは、「出産予定日」を基点にカウントします。

なぜなら、メンタルリープによる発達は、妊娠期間を通じたものだと考えられているからです。

なお、出産予定日が出生日にならない場合もあるため、出産予定日を基点とする週齢を「ワンダーウィーク」と呼びます。(つまり一覧表の週齢はワンダーウィークです)

出産予定日と出生日がずれていて、出生日を基点とした週齢の場合、いつ頃メンタルリープが来るのかを確認したいときは、下記の計算方法で出すことができます。

【出産予定日よりも早く生まれた】

ワンダーウィーク+(妊娠から出産予定日までの週数-在胎週数)=出生日を基点とした週齢

【出産予定日よりも遅く生まれた】

ワンダーウィーク+(妊娠から出産予定日までの週数-在胎週数)=出生日を基点とした週齢

出産予定日もしくは出生日を基点として、メンタルリープがいつ来るかを把握していたとしても、日々の忙しさで忘れてしまう人も多いでしょう。

それなら出産予定日を設定しておくと、メンタルリープが来る時期を知らせてくれる無料アプリを使うことをおすすめします。

それでは、どのような特性のあるリープが来るのか、回ごとに見ていきましょう。

【1回目】生後5週頃|五感のリープ

最初に起こるリープは「五感のリープ」と呼ばれ、生まれて1ヶ月を経過した5週頃に起こるとされています。

生後1ヶ月頃になると、外出する機会もあり、家にいるときとは比べ物にならないほど、音やにおいなどの刺激を受けるようになります。

すると、急速に五感が鋭くなっていき、好き嫌いが生まれたり、警戒心を抱いたりするようになるのです。

【2回目】生後8週頃|パターンのリープ

2回目のリープが起こるのは生後2ヶ月ほどの8週目頃で、「パターンのリープ」と呼ばれています。

物事に規則性があること、物体の構造にパターンがあることを理解し、何度も得た感覚、目にしたことのある形や模様、風景などを認識して、記憶するようになる時期です。

自分に手足があって、それを動かせることがわかり、積極的に動かして自己表現をするようにもなります。

【3回目】生後12週頃|推移のリープ

生まれて3ヶ月ほど、12週頃に起こるといわれているのは3回目の「推移のリープ」。

五感がさらに発達し、それまでは「点」として、一つひとつの事象を理解していたところを、「線」として認識できるようになっていきます。

この頃は、着替えたり掃除機をかけたりといった大人がする動作や、音の変化などに興味を持つようになります。

これが物事の理解につながっていくのです。

【4回目】生後19週頃|出来事のリープ

4回目のリープは「出来事のリープ」と呼ばれるもの。

生後19週頃に起こり、物事に複雑な変化があることを五感でとらえ、一連の出来事として認識するようになります。

例えば、放ったボールが転がっていく様子を一連の出来事としてとらえ、観察するようになるでしょう。

さらに、過去に見た出来事と、今起きている出来事を照合して考えたり、再現したりするようになる時期です。

大人の思考や行動にグッと近づいていきます。

【5回目】生後26週頃|関係のリープ

生後6ヶ月を過ぎた26週頃になると、5回目にあたる「関係のリープ」を迎えます。

この時期の特徴は、人と物の位置関係がわかり、さらには自分とそれらとの距離感が認識できるようになることです。

見えるものを取ろうとしたり、離れたところにいるママとの距離を詰めようとハイハイをしたりと、わかりやすい成長を目の当たりにできるでしょう。

【6回目】生後37週頃|分類のリープ

6回目の「分類のリープ」が起こるのは生後37週頃です。

この時期の赤ちゃんは、目の前の物体がどのカテゴリに属するのか、同じカテゴリに属していても何が違うのかを視覚や嗅覚などを使って調べます。

においをしきりに嗅いだり、何度も見たりさわったりしている様子が頻繁に見られるようになるでしょう。

物体だけではなく、人を含む生き物やさまざまな感情が、どのカテゴリに入るのかも理解していきます。

【7回目】生後46週頃|順序のリープ

生まれて1年くらいの46週頃には7回目のリープ、物事の順序を理解していく「順序のリープ」がやって来ます。

物事には順序があることを認識し、物と物の関係を理解して思案し、目標に向けて組み立てていけるようになります。

積み木を積んでいく、スプーンで食べ物をすくって口に運ぶといったことを順序立ててするようになるため、成長を感じられるでしょう。

【8回目】生後55週頃|工程のリープ

7回目から2ヶ月ほど経った生後55週頃、8回目のリープとして起こるのは「工程のリープ」です。

より複雑な順序、工程が理解できるようになり、興味を持ったことについて流れを知るために、積極的に行動するようになります。

「後片付けが上手にできるようになった」「お手伝いが思うようにいかないとぐずる」といったことが起こるのは、この時期ならではです。

【9回目】生後64週頃|原則のリープ

生後64週頃には9回目、ルールがあることを理解する「原則のリープ」を迎えます。

人や物による動作にはつながりがあり、原則・ルールが存在することを認識する時期です。

本当に原則通りなのか試したり、自分が知っている工程を変えたらどうなるのかチャレンジしたりします。

【10回目】生後75週頃|体系のリープ

最後の10回目は生後1年半を過ぎた、75週頃に来る「体系のリープ」です。

この時期は大人と同様に物事をとらえ、新しい環境にも適応できるようになります。

場所によってルールが異なることを認識し、良し悪しの区別もつくようになるこの時期。

家の中では活発なのに、保育園ではおとなしいという内弁慶を発揮しているなら、お子さんが環境の違いを把握し、適応しようとしている証拠です。

メンタルリープの対処法や注意点

メンタルリープの時期は、赤ちゃんの寝ぐずりや夜泣きなどで悩む親御さんは多いでしょう。

母乳をあげても、おむつを替えてもダメというときに試してほしい対処法や、知っておきたい注意点を紹介します。

抱っこなどで安心感を与える

急激な成長に伴う違和感やストレスは、赤ちゃんに不安な気持ちを抱かせます。

それを和らげるために、やさしく話しかけながら抱っこしましょう。
スキンシップは赤ちゃんに安心感を与えます。

赤ちゃんがぐずりはじめたら、スキンシップと笑顔で赤ちゃんの不安を取り除きましょう。

生活リズムを赤ちゃんに合わせて整えていく

メンタルリープの時期は、それまで普通にできていたはずの眠る、食べるといったことができなくなってしまうケースがあります。

一時的なものですが、これにより生活リズムは乱れがちです。

元に戻したくなるところですが、そうではなく赤ちゃんに合わせて調整していきます。
調整しているうちに、生活リズムは整っていきます。

夜になったら電気を消す、食べないなら時間を決めて片づけるなどメリハリをつけると、生活リズムが安定しやすいでしょう。

無理になんとかしようとせず、成長する過程として見守る

メンタルリープによるお子さんの寝ぐずりや夜泣きで睡眠不足になり、困っている親御さんもいるでしょう。

しかし、無理に泣きやまそう、寝させようというのは得策ではありません。

躍起になるほど親御さんが疲れるだけなので、体調が悪くてぐずっているわけではないのなら、無理になんとかしようとせず、まずは冷静になりましょう。

この時期が終わると、ぐんと成長した我が子が待っている、もっと幅広いコミュニケーションがとれるようになると思うと、楽しみの方が大きくなるはずです。

「メンタルリープは成長する過程だから大丈夫」と、心に余裕をもって見守り、サポートしましょう。

出産前にメンタルリープの知識をもっと身につけたい、メンタルリープについて相談したいという方は、助産師や保育士、看護師などの専門家に聞いてみましょう。

メンタルリープの時期に変化がないことはある?

メンタルリープの時期の赤ちゃんは、全員がぐずるというわけではありません。

ただ、赤ちゃんが不安を感じていないわけではなく、ぐずるというわかりやすい表現をしないため、大人が変化に気づきにくいケースもあります。

たとえば、ぐずるとは真逆で、笑顔になる赤ちゃんも中にはいるのです。

この場合、親御さんは気になるかもしれませんが、赤ちゃんが笑うことで不安を伝えられていると思っているようなら問題ないでしょう。

メンタルリープは赤ちゃんが飛躍するタイミング

メンタルリープの時期は寝ぐずりや夜泣きが激しく、対処に困ってしまうかもしれません。
しかし、このぐずりは赤ちゃんが飛躍的に成長しているサインでもあります。

10回迎えるメンタルリープの特徴を把握し、「今はこれを身につけているところなんだ」と、楽しみながらお子さんを見守りましょう。

お子さんが新しい発達を取得する場合には適切な刺激も必要です。

メンタルリープの段階に合ったおもちゃをプレゼントして遊ばせるようにすると、赤ちゃんが楽しめるうえに、より発達が促されるかもしれません。

ほかにも絵本を読む、落ち着いた音楽を聴かせるなど、適度な刺激が重要なのです。

親御さんは笑顔でスキンシップをすること、生活リズムを赤ちゃんにあわせて調整しながら整えていくことを意識して、メンタルリープの時期を過ごすようにしましょう。

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