子どもが自ら「行きたい」という意志を持ってトイレへ向かい、排せつできるようにトレーニングする「トイレトレーニング(トイトレ)」。
2歳頃から始めるのが一般的とよく聞きますが、どの子どもにも共通することなのでしょうか。
この記事では、トイレトレーニングを始める時期や方法などの基礎について詳しく解説します。
高橋 公一
医療法人社団高栄会みさと中央クリニック院長
専門領域:小児科
トイレトレーニングを始める時期は?
赤ちゃんからの子育ての中で避けては通れないのが「トイレトレーニング」。
周りの同年代の子どもたちがトイトレを始めると、「そろそろうちも……」と考えるママ、パパもいるでしょう。
しかし、周りにあわせてよいのか迷うところですよね。
まずは始める時期を確認しましょう。
2歳後半から3歳くらいが一般的
トイレトレーニングを始めるのは、一般的に2歳後半から3歳くらいの場合が多いです。
幼稚園に入園する3歳頃には、自分でトイレを使えるようになってほしいと、早めに始める親御さんが一定数いることも関係しているかもしれません。
個人差があるので急ぐ必要はない
子供の成長に個人差があることに伴い、トイレトレーニングを始めるのに適している時期も異なります。
まだ、トイレトレーニングを始めるには早い状態にも関わらず、急いで進めようとすると、失敗を繰り返すことになりかねません。
そうすると、子どもがトイレトレーニングを嫌がり、かえってトイレで排せつできるようになるのが遅くなってしまう可能性もあります。
子どもの成長と普段の様子を観察して、始める時期を見極めましょう。
お子さんが通っている保育園の保育士に相談したり、ベビーシッターや臨床心理士などの専門家が監修したコラムの情報を参考にしたりするのもよいでしょう。
トイレトレーニングを始める目安
トイレトレーニングを始めるとよい時期は個人差があります。
そのため大事になるのは、「これをクリアすれば」という目安です。
どのようなものがあるか確認してみましょう。
トイレまで自分で歩いて行ける
まず、トイレまで自分で歩いて行けるようになることが、トイトレをスタートするサインのひとつです。
ひとりで上手に歩けるようになると行動範囲が広がり、思っていることを実行できるようになるので、トイレトレーニングをはじめるきっかけとしてよいでしょう。
排尿の間隔が空くようになった
ひとりで歩けるようになる頃は、運動能力だけでなく脳も発達するため、「おしっこしたい」と感じることや、我慢することができるようになります。
膀胱におしっこをある程度溜められるようになる頃がトイレトレーニングのタイミングです。
しかし、溜められるおしっこの量には個人差があります。
2時間を待たずに「おしっこしたい」となるようなら、始めるのは保留します。
2時間以上、尿意の感覚が空くようになったら、トイレトレーニングの開始を考えましょう。
言葉で意思表示ができる
「チーでた」など、簡単な言葉でも意思表示ができる状況なら、トイレトレーニングをスムーズに進められます。
トイレでの排せつがうまくいったときに、「おしっこ出たね」と確認しあうことで、「排せつする」ということを子どもが理解しやすくなります。
大人の行動を真似できる
大人の行動を何かと真似する子どもは、トイレトレーニングがしやすいかもしれません。
大人が実際にトイレをする様子を見せてみると、その真似からトイレトレーニングが上手くいくケースがあります。
トイレトレーニングの進め方
トイレトレーニングを始める頃合いになったとき、どのように進めればよいか見ていきましょう。
トイレを排せつする場所と意識づける
まず、トイレがおしっこやうんちをする場所だと知ってもらうことがポイントです。
そのため、トイレに興味を持ってもらえるようにしましょう。
その入口として、トイレを題材にした絵本を読み聞かせたり、教育動画を見せたりすることをおすすめします。
「おしっこ」や「うんち」という言葉が指すものを理解していない小さい子どもには、どんな状況でもかまわないので、おしっこが出たときに「チー出たね!」などと声掛けしましょう。
そうすると、おしっことは自分が今出したものだということを理解できるようになります。
便座に座らせてみる
子どもがトイレに興味を持ったタイミングで、ご家族とトイレに入る機会を持ちましょう。
その際は、補助便座やおまるをあらかじめ用意しておき、座らせます。
そうしているうちに、思いがけずおしっこが上手くできることがあるかもしれません。
そのときはたくさん褒めましょう。
喜んでもらえるとわかると、また同じようにしようと思ってくれるはずです。
トレーニングパンツを使う
トイレトレーニングの過程で普通のパンツを履かせるようになりますが、おもらししてしまったときの片付けが手間です。
そんなときはトレーニングパンツを使うとよいでしょう。
おむつと違っておしっこでパンツが濡れたときの不快感がわかりやすい一方、普通のパンツのように外には漏れません。
トイレトレーニングで用意すべきアイテム
トイレトレーニングを始める際、用意すべきアイテムにはどのようなものがあるのでしょうか。
確認してみましょう。
「トイレ」について学べる絵本
トイレトレーニングを始めた子ども向けの絵本は、トイレに興味を持ってもらうためのほか、知識を身につけてもらうためにも有効です。
中でも、トイレを使うのが楽しみになるような仕掛け絵本はおすすめ。
トイレでのおしっこに何度も失敗しても、それを乗り越えて成功するお話や、パンツを履きたくなるようなお話の絵本を選ぶと、前向きにトイトレを頑張ってくれるでしょう。
おすすめの絵本は以下の通りです。
- あけて・あけてえほん といれ(作:新井 洋行/偕成社)
縦開きで、トイレの蓋を開けるようにページを開けるのが楽しい!
かわいらしい絵柄や言葉のかけ合いも、子どもたちの興味を引きます。
- ノンタンおしっこしーしー(作・絵: キヨノ サチコ/偕成社)
子どもたちに人気のノンタンシリーズ。
おしっこをするのに一度は失敗してしまうノンタンが、それを乗り越えて成功する姿に、励まされるお子さんは多いでしょう。
- パンツのはきかた(作:岸田 今日子・絵:佐野 洋子/ 福音館書店)
おむつから卒業しようとしている頃のお子さんにとって、パンツを履くのは至難の業。
ですが、歌うようにこの絵本を読みながら挑戦すれば、きっと上手く履けるはずです。
おまるや補助便座
体型の違いもあり、大人が使うトイレをそのままトイレトレーニングに使うことは難しいです。
おまるや補助便座といったトイトレ用品を使って、トイレでの排せつに慣れてもらうようにします。
どちらを使うのが良いかはメリットとデメリットを確認して判断するとよいでしょう。
【おまる】
■メリット・トイレ以外にも設置でき、トイレの雰囲気や寒暖差がイヤという問題を解決できる・足を踏ん張れるので排せつしやすい
■デメリット
・使った後に毎回洗わなければならない
・おまるに慣れた後、トイレの雰囲気に慣れる過程も必要になる
【補助便座】
■メリット
・排せつしたら通常通り流すだけで済む
・トイレの雰囲気に慣れることができる
■デメリット
・トイレの雰囲気や寒暖差に慣れないと、トレーニングが進まない
・足を踏ん張れず不安定なため、怖がるケースがある
踏み台
補助便座のデメリットとして、足を踏ん張れない点がありますが、踏み台があれば解決できます。
子どもが自分で便座に座るためにも使えて、大人が抱きかかえて便座に座らせる手間も省けます。
足を踏ん張れるようになると、便秘を防ぐことにもつながるので、用意しない理由はありません。
おさえておきたいトイトレのコツ
いざトイレトレーニングを始めてみても、思うように進まないこともあるでしょう。
そんなときにきっと役立つ、おさえておきたいトイトレのコツを紹介します。
好きなキャラクターの補助便座やパンツを選ばせる
空間が怖くてトイレに行きたがらない、便座に座るのをイヤがるという場合は、子どもが好きなキャラクターなどの補助便座を用意するとよいでしょう。
イヤイヤ期に入ると特に、子どもの意志をなるべく尊重しないと上手くいかなくなるので、子どもに好きなものを選んでもらうとよりよいです。
また、子ども自身が選んだお気に入りのパンツを履かせるようにすると、「汚してはかわいそう」という気持ちになり、「おしっこでる」と言葉に出してくれるようになるでしょう。
早く進めようと無理強いしない
幼稚園に入園する前に、ひとりでトイレができるようになってほしいなどと期限を設けると、早く進めようと子どもに無理強いしがちです。
便座に座りたがらない子どもを無理矢理座らせようとすると、トイレがイヤなことをさせられる場所になってしまい、ますます上手くいかなくなるでしょう。
焦るとかえって遠回りになるので、心に余裕を持って進めるよう意識しましょう。
上手くできたらたくさん褒める
トイトレの過程で何かしら上手くできたことがあれば、ちょっと大げさかな?と思うくらいたくさん褒めましょう。
排せつ自体は失敗しても「チーしたい」と言えたなら、それを徹底的に褒めるのです。
褒めると「またすれば喜んでくれる」と頑張ってくれます。
失敗しても叱らない
「何度も同じ失敗をする」「この前はできたのに、今日は失敗した」ということは、トイレトレーニングを行う中でよくあることです。
育児だけではなく、家事や仕事にも追われているときに、普通のパンツでお漏らししてしまうと、つい叱りたくなることもあるでしょう。
けれども、子どもが成長する過程で避けては通れないので、思うように進まなくても、「大丈夫!」という気持ちでいることが大切です。
何度も同じ失敗をするときは何かしら原因があるはずなので、子どもの様子を観察して、その原因を探り、解決するやり方を見つけましょう。
トイトレが上手くいかない場合の対策
いろいろ試してみてもトイトレが上手くいかない場合は、次のような対策をとりましょう。
トイレに行くことが楽しみになるようにする
トイレは基本的に閉所なので、怖いと感じる子どもはかなりいるでしょう。
その上、汚れていたり、悪臭がしたりすると、余計に行きたくなくなります。
清潔を保ち、照明などで暗い雰囲気にならないように気を遣いましょう。
また、トイレに行くのが楽しみになるように、トイレトレーニングに成功したらシールをカレンダーに貼るなど、目に見えて達成感を味わえる仕組みを用意するのもおすすめ。
カレンダーやシールは子どもが好きなキャラクターや動物、乗り物などにすると、より喜んでくれるでしょう。
好きなキャラクターのグッズを飾ったり、トイレットペーパーをかわいらしい絵柄付きのものにしたりするだけでも、喜んでくれるかもしれません。
進まない時は一旦休憩
自分でトイレに行けるようになり、満を持して普通のパンツに切り替えたら、おねしょをするようになってしまったというケースはよくあります。
お子さん本人はパンツをやめたくなくても、思い切っておむつに戻してみると、朝までおしっこを溜めておけるようになり、再チャレンジで上手くいく可能性があります。
上手くいかないときは一旦休憩するのも、トイトレを成功させるためのひとつの手です。
ほかの子どもと比較しない
周りに同じ年頃の子どもがいて、その子がスムーズにトイレトレーニングを進めていると、ついつい我が子と比べてしまうこともあるでしょう。
けれども、「〇〇ちゃんはできてるのに」などと、本人の前で言ってはいけません。
比べられるのは子どもだって当然イヤです。
お子さんの気持ちも慮って、その子のペースにあわせてサポートすることを心がけましょう。
トイレトレーニングは焦らずに進めよう
トイレトレーニングをはじめる時期は2歳後半から3歳という場合が多いですが、個人差があります。
トイトレを始めるには早い状態で、「周りの子が始めているから」と無理に進めようとするのは禁物です。
周りの大人が無理に進めようとすると、余計に上手くいかなくなって、子どものやる気を削いでしまうことがあります。
できるだけスムーズに進めるために、子どもの様子を観察しつつ、失敗しても叱らずに、上手くできたらきちんと褒めることを心がけましょう。
まずは絵本などでトイレに興味を持ってもらい、トイレにいる時間が心地良くなるように環境を整え、お子さんが気に入りそうなトイトレグッズを揃えましょう。
お子さんの排泄に対するお悩みは、親御さんなら誰でも持つものです。
焦らず、頑張りすぎず、干渉しすぎず、大きな気持ちで付き合っていってあげてくださいね。
#トイトレ #2歳 #トイレトレーニング