産後ボケ

「物忘れがひどくなった」
「話そうとしても、言葉がうまく出てこなくない」
「頭がボーッとする」

産後にこのような症状がある場合、『マミーブレイン(産後ボケ)』かもしれません。
今回は、助産師監修の元、多くのママを悩ませるマミーブレインの特徴や症状、原因、対処法について解説します。

監修医師 ポートサイド女性総合クリニック 院長 清水 なほみ 

2001年広島大学医学部医学科卒業
広島大学附属病院産婦人科・中国がんセンター産婦人科・ウィミンズウェルネス銀座クリニック・虎の門病院産婦人科を経て、2010年9月「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業
日本専門医機構専門医
日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー

所属学会
日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本思春期学会・日本不妊カウンセリング学会

すべての女性が「本来の自分の輝き」を取り戻す場所を作るため、2010年横浜ポートサイドに女性専用クリニックを開業。自らが「二者択一ではなくすべてを手に入れる人生」を実践し、開業半年後には長女を出産。現在は2児の母として、クリニックの院長として、日々の診療を通して女性の美と健康をサポートする。

目次

マミーブレインとは

『マミーブレイン』は、産後ボケとも呼ばれる、産後の女性にみられる特有の現象を指す言葉です。正式な医学用語ではなく、明確な定義はありません。(医療現場でこの用語が使われることはありません)

一般的には、産後に頭の働きが鈍くなり、記憶力や判断力、集中力、読解力などの低下が見られる状態を指します。
マミーブレインは出産に伴う一時的な症状で、時間経過とともに自然と回復します。
個人差はありますが、半年〜1年程度で治る場合が多いです。

【チェックリスト】マミーブレインの症状

マミーブレインの代表的な症状は、以下のようなものがあります。
当てはまるものがあるかチェックしてみましょう。

  • 言葉がうまく出てこない
  • 人の話や文章の内容をすぐに理解できない
  • 物忘れが激しく、すぐに思い出せない
  • 頻繁に忘れ物やなくし物をする
  • 同時に複数のことができない
  • 頻繁にケアレスミスをする
  • 時間の管理ができない
  • ボーッとしてしまう
  • 物事に集中できない

マミーブレインの原因

ママが泣いている

マミーブレインの原因は明らかになっていませんが、『一時的な脳の萎縮』『睡眠不足や疲れ』『女性ホルモンの大きな変化』などが影響していると考えられています。
それぞれの原因について紹介します。

一時的な脳の萎縮

近年、マミーブレインの原因のひとつとして、脳の一時的な萎縮が注目されています。
研究によると、妊娠中のホルモンバランスの影響により、脳は最大7%ほど萎縮し、産後6ヶ月〜1年程度で元に戻るといわれています。

この萎縮によって、記憶力や理解力、判断力などが一時的に低下しますが、その一方で、共感や愛情など特定の領域は発達することがわかっています。これは、赤ちゃんのお世話に適応するためと考えられています。

睡眠不足や疲れ

慣れない育児をする中で蓄積した睡眠不足や疲労もマミーブレインの要因と考えられます。

睡眠不足

産後は授乳や夜泣き、おむつ替えなど、赤ちゃんのお世話に追われて十分な睡眠時間を確保するのが難しくなります。
慢性的な睡眠不足は脳の機能低下を招き、記憶力や集中力、思考力などの低下に繋がります。

疲労

出産によるダメージを抱えながら慣れない育児をすることは、想像以上に疲労を蓄積します。疲労は自律神経に影響を与え、脳の働きを鈍らせます。
自律神経は、心拍数や血圧、体温などを調整する役割を担っていますが、疲労によってバランスが崩れると、脳への血流が滞ったり、ホルモンバランスが乱れたりして、脳の機能が低下します。

ホルモンバランスの大きな変化

産後の女性ホルモンの急激な変化もマミーブレインの要因のひとつと考えられています。
妊娠中は、胎盤から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが大量に分泌されます。これらのホルモンは、子宮を大きくしたり、乳腺を発達させたり、出産の準備を整える役割を担っています。

出産後はこれらの女性ホルモンが急激に減少して、ほとんど0に近い状態になります。
女性ホルモンのうち卵胞ホルモン(エストロゲン)は、集中力や短期記憶、感情コントロールなどの脳機能に影響を与える物質のため、急激な減少がマミーブレインの原因となる可能性があります。

先輩ママの体験談

子育て中または、子育て経験のある女性100人を対象に、マミーブレインに関するアンケート調査を実施しました。

マミーブレインは約8割が経験する

出産後にマミーブレインの症状はありましたか?

マミーブレインの経験を問うアンケートでは、約8割の人が「はい」と回答しました。
「いいえ」と回答した人は2割程度しかおらず、多くの人がマミーブレインを経験していることがわかりました。

マミーブレインという言葉はあまり知られていませんが、産後ママにとって身近な問題であるといえるでしょう。

実際にあった症状・体験談についておしえてください

マミーブレインの経験があるママたちに、実際にあった症状や体験談を聞いてみたところ、以下のような声が寄せられました。

「買い物に行ったら、カゴの中身を全部忘れて帰宅してしまった。お金だけ払って…」

「車の運転中にボーっとしてしまい、事故に遭った。」

「産後、いつもやっていた家事がどうやっていいかわからなくなった。」

「ミルクをあげた時間を毎時間どうしても覚えきれなかった。忘れっぽい。必ずアプリでメモしていた。」

「早めに職場復帰したが、以前は当たり前にできていたパソコン作業が思うようにいかず、時間が倍以上かかった」

マミーブレインの症状によっては仕事や育児、家事に影響が出てしまい、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

思わぬ事故を引き起こす危険もあるため、症状の出方を把握して対処することが大切です。

マミーブレインの期間は個人差が大きい

マミーブレインの期間

期間についてのアンケート調査で最も多かった回答は「〜2ヶ月」で32人、次いで「〜4ヶ月」が16人、「〜6ヶ月」が17人と、産後半年以内に症状が改善した人が約7割を占めています。

マミーブレインによる症状は、産後数ヶ月〜1年程度で徐々に改善していくのが一般的といわれていますが、「1年〜3年以上」と回答した人も約2割おり、個人差があることが分かります。

症状が長引く場合は、無理せず休息をとったり、周囲の人に助けを求めたりすることが大切です。また、半年以上物忘れなどの症状が続いている場合は、別の病気が隠れている可能性もあるので、必要であれば医療機関を受診することも検討しましょう。

マミーブレインになった時に効果的な対処や工夫したことはありますか?

マミーブレインの経験があるママたちに、効果的だった対処法や工夫したことを聞いてみたところ、以下のような声が寄せられました。

「家族や親に自分の状況を伝えておいて、忘れていないかの確認をしてもらったり、メモをして忘れないようにしたり、周りの人に協力をしてもらっていました。」

「赤ちゃんが寝ている時は出来る限り自分も休むなど休憩の時間を多くするようにしました。」

「何を先にするか優先順位を決めてから取り組むようにしていた。」

「出来るだけ、生活リズムを整えてスマホのスケジュール機能やアラームを活用した。」

「一日の予定ややるべきことを時間順にメモし、終わったらチェックするようにしていた」

マミーブレインは、誰にでも起こる一時的な脳の変化であり、恥ずかしいことではありません。
周囲に協力を求めることに抵抗を感じるかもしれませんが、一人で抱え込まず、積極的に助けを求めることが大切です。

忘れものをしたり、やるべきことがわからなくなったりするときは、スマホのスケジュール機能やアラーム、メモなどを活用するのがおすすめです。
これらのツールを活用することで、記憶の補助となり、ミスを防ぎやすくなります。

マミーブレインではなく産後うつの可能性も

マミーブレインは出産に伴う一時的な症状のため、時間の経過とともに自然に治ります。
しかし、マミーブレインだと思っていても、「産後うつ」を発症している場合もあります。

女性は約10人に1人が一生のうちに一度はうつ病になるといわれており、とくに妊娠中や産後はうつ病になりやすい時期といわれています。
産後うつは集中力がなくなる、物事への対応力が低下するといった症状がマミーブレインと似ており、他にも以下のような症状が現れることがあります。

  • 感情のコントロールができず、イライラしたり突然泣いたりする
  • 気分が落ち込む
  • 眠れない、または眠りすぎてしまう
  • 食欲がない、または食べすぎてしまう
  • 自分を責めてしまう
  • やる気が起きない
  • 赤ちゃんが可愛いと感じない
  • ひどく疲れる

産後うつは専門的な治療が必要となるため、産後うつの疑いがある場合は早めに産婦人科やメンタルクリニック、地域の保健所などに相談してみましょう。
特に、ひどく自分を責めたり、「消えてしまいたい」といった気持ちがわいてくる場合は、直ちに専門家への相談が必要です。

マミーブレインは約8割の人が経験する出産に伴う一時的な症状

家族で笑顔

マミーブレインは病気ではなく、約8割の人が経験する出産に伴う一時的な症状です。
マミーブレインはさまざまな場面で影響を及ぼすため、症状がつらいときは一人で悩まずに、なるべく周りの人にサポートしてもらうことが大切です。

回復するまでは、自分に合う対処法を実践して上手に付き合っていきましょう。
ただし、マミーブレインと思っていたら、産後うつだったというケースもあります。
症状に不安がある場合は、医療機関や保健センターに相談することをおすすめします。

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