ギャラン反射

赤ちゃんがお尻をフリフリ振っているように動くことから、可愛いと話題になっている『ギャラン反射』。
ギャラン反射は赤ちゃんが生まれながら備わった原始反射のひとつで、見ることができる期間は限られています。

今回は、ギャラン反射とはどのようなものなのか、いつまで見られるのかなど、気になる疑問について詳しく解説します。

監修助産師 一般社団法人産前産後ケア推進協会 代表理事  東京情報大学看護学部 教授 市川香織 

助産師として、大学病院、助産師学校教員、厚生労働省母子保健課、公益社団法人日本助産師会事務局長等を経て現職。産後ケアをはじめ女性の生涯の健康支援活動、子育て相談等に携わっている。

目次

ギャラン反射とは

まずは、ギャラン反射の特徴や起こる理由、出現・消失時期などを紹介します。

ギャラン反射とは原始反射のひとつ

ギャラン反射は原始反射のひとつで、赤ちゃんの背骨の外側に沿って上から下にこすると、こすった側に向けて体を曲げる動作のことです。

お尻を持ち上げてフリフリと振っているように見えるため、SNSを中心に可愛いと話題になっています。

【原始反射とは】

原始反応とは赤ちゃんが生きるために備わった反射で、刺激に対して無意識に反応する動作を指します。原始反射にはさまざまな種類があり、ママのお腹の中にいる頃や新生児期から出現します。

赤ちゃんは脳が発達途中で、自分の意志で体をコントロールできません。そのため、生きていけるように原始反射が備わっているのです。
脳が発達して体をコントロールできるようになると、原始反射は自然に消失します。

原始反射は発達の基礎となるものなので、乳児健診では赤ちゃんの発達状態を判断するために、原始反射の現れ方を確認する場合があります。

ギャラン反射は何のために起こる?

ギャラン反射は、ママのお腹の中にいるときに筋力を発達させたり、姿勢を変えて産道を通りやすくしたりする役割があるといわれています。お腹の中にいるときに役立つ反射のため、生後まもなく消えてしまいます。

ギャラン反射がある時期はいつからいつまで?

原始反射の中でもギャラン反射は早くに消失しやすく、胎児期後期から現れて生後2〜6ヶ月頃までに消失するのが一般的です。

ただし、原始反射がある時期は個人差があり、ギャラン反射の出現・消失時期も赤ちゃんによって異なります。

ギャラン反射が『ない』もしくは『消えない』と障害の可能性がある?

ギャラン反射がある期間や現れ方は個人差があるため、赤ちゃんによって反応がわかりにくい場合やなかなか消失しない場合があります。ギャラン反射がないときは、うまく刺激を与えられていなかったり、すでに消失していたりする可能性もあるでしょう。

ギャラン反射はお腹の中にいるときに役立つ反射のため、乳児健診で調べることはほとんどありません。脳性まひが疑われる場合はギャラン反射を調べることもありますが、他の症状とあわせて総合的に判断します。

ギャラン反射がない・消えないからといって、あまり心配する必要はありません。

ギャラン反射を見る方法

【ギャラン反射を見る方法】

  1. 赤ちゃんのお腹に片手を当てて、優しく支えながら水平にうつ伏せにして体を浮かせる
  2. 赤ちゃんの背骨の外側に沿って、指の腹や関節で優しく上から下にこする

ギャラン反射を起こす時の注意点

ギャラン反射を起こすときは、いくつかの注意点があります。赤ちゃんに負担を与えないように、注意点を確認してから行いましょう。

赤ちゃんをやさしく支える

赤ちゃんをうつ伏せにするときは、優しく支えましょう。お腹を強く掴むと、圧迫されて呼吸しにくくなってしまいます。

片手で支えるのが難しい場合や安定しない場合は、赤ちゃんの足が床につかないようにして、硬い布団や膝の上に寝かせると良いでしょう。

何度もやりすぎない

赤ちゃんのお尻を振る仕草は可愛らしいですが、何度もやりすぎないようにしましょう。
赤ちゃんは刺激に対して本能的に反応しているだけなので、長時間行うとストレスを与えてしまう可能性があります。

反応が薄くても無理強いせず、嫌がっているときはすぐにやめてあげましょう。

授乳直後はやらない

ギャラン反射はうつ伏せの状態にするため、授乳直後に行うと吐き戻してしまう可能性があります。
授乳直後は控えて、お腹が落ち着いて赤ちゃんの機嫌が良いときに行うと良いでしょう。

赤ちゃんの安全を確保する

安全を確保して、赤ちゃんの様子を確認しながら行うことも大切です。赤ちゃんを抱き上げるときは、手から滑り落ちる恐れがあります。

ギャラン反射を行うときは、座った状態でなるべく低い位置で抱き上げましょう。周囲に危険なものがないか確認し、布団やクッションを敷いておくと安心です。

ギャラン反射はうつ伏せにするため、窒息事故にも注意が必要です。
赤ちゃんを支えるとき、硬い布団や膝の上に寝かせるときは、口や鼻を覆わないように注意しましょう。また、うつ伏せ寝はSIDS(乳児突然死症候群)のリスクがあるため、うつ伏せにしたままそばを離れたり、そのまま眠らせたりしないようにしましょう。

ギャラン反射以外にもたくさんある!原始反射一覧

ギャラン反射以外にも、原始反射にはさまざまな種類があります。ここでは、代表的な原始反射を一覧で紹介します。

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反射名反応出現・消失時期健診項目
探索反射(ルーティング反射)赤ちゃんの唇やその周りに乳首や指で触れると、触れられた方に顔を向けて口を開きます。胎児期後期から月齢4~6ヶ月頃まで
モロー反射赤ちゃんの頭を支えながら体を持ち上げ、急に体を落下させると両手を大きく広げます。大きな音で驚いたときや姿勢を急に変えたときなどにも起こり、赤ちゃんが眠っているときにも起こることがあります。胎児期後期から月齢4~6ヶ月頃まで
吸啜(きゅうてつ)反射赤ちゃんの口に指を入れると、舌と唇で吸引します。胎児期後期から月齢5~12ヶ月頃まで
手掌把握反射赤ちゃんの手のひらを指で触ると、ぎゅっと握りしめます。胎児期後期から月齢4~6ヶ月頃まで
足踏み反射(歩行反射)赤ちゃんのわきの下を支えて立たせて前傾させると、歩くように足を動かします。胎児期後期から月齢2ヶ月頃まで
バビンスキー反射足の裏の外側をかかとからつま先にかけてこすると、足の指を開きます。胎児期後期から1~2歳頃まで
非対称性緊張性頸反射赤ちゃんを仰向けに寝かせて顔を横に向けると、顔が向いた側の手足を伸ばし、反対側の手足を曲げます。生後から月齢2~6ヶ月頃まで

赤ちゃんの発達状態を確認するために、健診では「モロー反応」、「吸啜反応」、「手掌把握反射」、「非対称性緊張性頸反射」などの原始反応を調べます。

一方で「ギャラン反射」は、お腹の中にいるときに役立つ動きのため、健診で調べることはほとんどありません。そのため、万が一反応が薄くてもそこまで心配する必要はありません。

ギャラン反射の反応には個人差がある!反応が薄くても気にしなくて大丈夫

赤ちゃんがパッと手を広げる『モロー反射』やおっぱいを探すように顔を動かす『探索反射』など、赤ちゃんが無意識に反応して動く原始反射にはさまざまな種類があります。

その中でも、ギャラン反射はお尻を振る様子が可愛く見えるため、やってみたいママ・パパは多いでしょう。一般的にギャラン反射は生後2〜6ヶ月頃に消えてしまうので、動画に撮って思い出に残しておくのも良いかもしれません。

ただし、ギャラン反射の現れ方には個人差があるため、反応が薄くても気にしなくて大丈夫です。それでも不安がある場合は、健診の際に医師に相談してみると良いでしょう。

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