産後の多くの女性を悩ませるぽっこりお腹。
妊娠中に大きくなった子宮や脂肪がなかなか元に戻らず、焦っている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、産後のお腹が戻るまでの期間、たるみ・ぽっこりお腹の原因、そして自宅でできる引き締め方法を詳しく解説します。
2001年広島大学医学部医学科卒業
広島大学附属病院産婦人科・中国がんセンター産婦人科・ウィミンズウェルネス銀座クリニック・虎の門病院産婦人科を経て、2010年9月「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業
日本専門医機構専門医
日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
所属学会
日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本思春期学会・日本不妊カウンセリング学会
すべての女性が「本来の自分の輝き」を取り戻す場所を作るため、2010年横浜ポートサイドに女性専用クリニックを開業。自らが「二者択一ではなくすべてを手に入れる人生」を実践し、開業半年後には長女を出産。現在は2児の母として、クリニックの院長として、日々の診療を通して女性の美と健康をサポートする。
産後のぽっこりお腹はいつ戻る?
赤ちゃんが生まれても、お腹はすぐに元どおりにはなりません。
赤ちゃんの成長に合わせて徐々に大きくなった子宮は、一般的に6〜8週間かけて妊娠前の子宮の大きさに戻るといわれています。
【産後の子宮の大きさ】
- 出産直後:妊娠7〜8ヶ月頃と同程度
- 産後4週間程度:妊娠6ヶ月頃と同程度
- 産後6〜8週間程度:妊娠前と同程度
そのため、妊娠・出産によりぽっこりとしたお腹は、子宮の収縮とともに、徐々に元の大きさに戻っていきます。 ただし、子宮が元の大きさに戻っても、お腹のたるみやぽっこりお腹がすぐに解消するわけではありません。
次の章で、産後になかなかお腹がへこまない原因について詳しく解説します。
産後にお腹がへこまない原因
ここでは、産後のお腹が戻りにくい主な原因を3つ紹介します。
リラキシンの影響による骨盤のゆるみ・骨盤前傾
妊娠中は、『リラキシン』というホルモンが分泌されます。リラキシンは、骨盤周りの靭帯や関節、筋肉をゆるめる作用を持ち、出産に向けて赤ちゃんが通りやすいように、骨盤を広げる働きをします。
リラキシンの分泌量は、産後2〜3日から徐々に減少し、6ヶ月程度で妊娠前と同じくらいに戻ります。リラキシンの分泌がある時期は骨盤がゆるんで広がりやすいため、お腹が引き締まりにくい傾向があります。
また、骨盤がゆるむと支えづらくなって前に傾き(骨盤前傾)、お腹がぽっこりと出てしまうこともあります。
内臓下垂・筋力低下
内臓下垂
リラキシンの影響により、骨盤のゆるみや骨盤前傾が起きると、お腹の筋肉をうまく使えなくなり、子宮や腸などの内臓を支えにくくなります。すると、内臓が下に落ちて(内臓下垂)、下腹がぽっこりと出る原因になります。
筋力低下
産後は妊娠、出産の影響で、全身の筋力が低下しています。特に骨盤底筋や腹筋は、妊娠中に引き伸ばされて薄くなったり、出産で負荷がかかって傷ついたりするため、弱くなりやすい部位です。
体幹の筋力が低下すると、正しい姿勢を維持するのが難しくなります。それにより、骨盤が傾き、お腹がぽっこりと出てしまう場合があります。
また、腹筋はお腹周りを支えているベルトのようなものなので、この腹筋群が薄くなって力が入らなくなると、内臓が押し下げられる力に抵抗できないため、意識をしてお腹を引っ込めようとしても引っ込めることができなくなります。
腹直筋離開
産後なかなかお腹が戻らない原因は、『腹直筋離開』による影響の場合もあります。腹直筋は『シックスパッド』と呼ばれているお腹の表面にある筋肉で、姿勢の維持や内臓の保護といった役割があります。
腹直筋離開は、子宮のふくらみやリラキシンの分泌、筋力低下などの影響によって、腹直筋の中心にある白線という組織が横に伸び、腹直筋が左右に広がった状態になることです。
腹直筋乖離は、出産後の36%の女性に起こるとされ、主に帝王切開や多胎出産、高齢出産の人がなりやすいといわれています。腹直筋離開を起こすと筋肉に力を入れても腹筋を固くすることが困難になるため、内臓が下がり、お腹がたるんでしまうことがあります。
【腹直筋離開の症状】
- 産後3ヶ月以上経っても、お腹がへこまない
- 産後から出べそになった
- へその上が陥没している
- お腹に力が入りにくい
- お腹に張りがない
- 四つん這いになると、お腹が垂れる
- 咳をすると、お腹が盛り上がる
- 食後に下腹が出る
- 体がグラグラして安定しない
- 肩こりや背中の痛み、腰痛がある
- 呼吸が浅く、疲れやすい
上記のような症状がある場合は、腹直筋離開の可能性があります。
【腹直筋離開のチェック方法】
- 仰向けに寝て、両膝を立てる
- 息を吐きながら、おへそを覗き込むように頭を持ち上げる
- おへその上下に指を横にして置き、何本入るか確認する
指が2本以上入る場合は、腹直筋離開の可能性が高いです。
腹直筋離開の場合は、腹筋を鍛えるような運動は逆効果になるので注意が必要です。
【原因別】産後のお腹を引き締める方法
産後のお腹を引き締めるには、ぽっこりお腹の原因に合わせてトレーニングをすることが大切です。ここでは、ぽっこりお腹の原因ごとに、おすすめのストレッチを紹介します。
【注意点!】
産後すぐの筋トレ運動は体への負担が大きく、体調不良やトラブルを招く恐れがあります。出産直後から産褥体操はしても大丈夫なので、助産師の指導のもと、まずは開いた骨盤を締めるトレーニングから始めましょう。
出産方法や体の回復によって個人差はありますが、通常の運動の開始時期は産後1ヶ月以降が目安です。
1ヶ月検診で医師から運動をしても問題ないと言われたら、体調に合わせて重力負荷の少ない筋トレから始めましょう。
骨盤のゆるみ・骨盤前傾に効くストレッチ
【お腹を引き締めるためのポイント】
骨盤のゆるみや骨盤前傾タイプは、腹筋や股関節周りの筋肉、骨盤の傾きに影響を与える筋肉を伸ばし、鍛えることが大切です。
ただし、これらの筋肉を鍛えても、日常生活での姿勢が悪いと効果を実感することは難しくなります。日頃から正しい姿勢・骨盤の位置を意識することが大切です。
内転筋トレーニング
内転筋(太ももの内側の筋肉)の筋力が弱まってくると、骨盤が前に傾きやすくなります。内転筋は脚を閉じるときに使う筋肉で、日常生活で使うことが少ない筋肉なのでトレーニングで鍛えましょう。
【やり方】
- 足の間にストレッチボール(クッションや丸めたバスタオル、雑誌などでもOK)を挟む
- 太ももの内側に力を入れた状態をキープする(20〜30秒程度)
股関節エクササイズ
骨盤のゆるみや骨盤前傾には、股関節の周りにある筋肉を動かし、柔軟性を高めることが大切です。
【やり方】
- 壁を右にして、壁から少し離れて立ち、右手を肩の高さで壁につける
- 背筋を伸ばし、上半身は真っ直ぐにした状態で振り子のように左脚を大きく前後に動かす(20秒程度)
- 壁を左にして立ち、右脚も行う
ヒップリフト
臀筋(お尻にある筋肉)や腹筋が弱まると、骨盤が前傾しやすくなります。
ヒップリフトで臀筋と腹筋を鍛えましょう。
【やり方】
- 仰向けに寝て脚を肩幅に開き、両膝を立てる
- 肩・お腹・膝が一直線になるようにお尻を持ち上げ、下げるを繰り返す(20〜30回程度)
余裕がある場合は、お尻を持ち上げたあと、2〜3秒キープしてから下げると効果が高まります。
おしりを持ち上げる時にお腹を突き出したり、骨盤底筋に圧をかけると逆効果なので、お腹を薄く保って骨盤底筋を引き込むように意識しましょう
腹直筋離開におすすめのストレッチ
お腹を引き締めるためのポイント
骨盤のゆるみや骨盤前傾タイプの場合は、腹筋を鍛えるのが効果的ですが、腹直筋乖離を起こしている場合は、腹部が圧迫され、さらに腹直筋を広げてしまう恐れがあります。
腹直筋離開を起こしている場合は、左右に広がった腹直筋を中心に戻すエクササイズを行うようにしましょう。
腹直筋トレーニング
腹直筋を戻す腹筋トレーニングです。
上体を起こしすぎると、腹直筋を圧迫して逆効果になるので注意しましょう。
【やり方】
- 仰向けに寝て、両膝を立てる
- 両手の指3本(人差し指・中指・薬指)または手のひらを腹直筋の外側に当てる
- ゆっくり息を吐きながら、おへそを覗き込むように軽く頭を持ち上げ、同時に添えた手指を内側に寄せる
- 息を吐き切ったら、元の体勢に戻す
骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋を鍛えることで、腹直筋が中心に戻りやすくなります。
【やり方】
- 足を肩幅程度に開き、上に引き上げるイメージで膣・肛門に力を入れて締める
- 10秒キープしたらゆるめる
立って両手を机についた姿勢、仰向け、四つん這い、椅子に座った姿勢など、自分のやりやすい体勢で行いましょう。
骨盤底筋のトレーニングは、正しい力の入れ方が分かりにくい場合もあります。産後の入院中に、正しく力を入れられているかを確認してもらいながら、助産師にトレーニング方法を指導してもらうと良いでしょう。
自分に合った方法で産後のお腹を引き締めよう!
産後に体型がなかなか戻らないと焦りがちですが、出産を終えた体が妊娠前の状態に回復するには時間がかかるものです。
大切なのは、自分に合った方法で適切なトレーニングを続けること。
今回紹介したトレーニング方法を参考に、無理せず、自分のペースで続けてみてください。
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