育児の中でも悩まされることが多い「夜泣き」。
「いつまで続くんだろう」「どう対処すればいいのかわからない」と悩んでいるママやパパも少なくないでしょう。
この記事では小児科医監修の元、夜泣きの時期や原因、対策について詳しく解説します。
白井 沙良子
慶應義塾大学医学部 卒業 / 小児科医として、都内クリニックにて勤務
株式会社Kids Publicにて、小児科・産婦人科へのオンライン医療相談を運営 / 毎日新聞「医療プレミア」にて毎月連載
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【夜泣きとは】夜泣きをするのはいつからいつまで?
夜泣きとは、授乳やおむつ替え、体調不良など、明確な理由がないにもかかわらず夜中に何度も泣き出し、なかなか泣き止まない状態を指します。
生後3〜6か月頃から始まり、1歳半頃まで続くことが多いですが、個人差が大きく、まったく夜泣きをしない赤ちゃんもいます。
日本では、夜泣きが原因で睡眠不足やストレスを感じている親御さんが多く、育児の悩みとして捉えられています。
一方、海外では住居環境や風習から、泣かせるネントレ(Cry it out)を行う家庭も少なくありません。
これは、赤ちゃんを1人で寝かせて泣かせ、自然に泣き止ませる方法です。
こうした海外の育児方法の影響もあり、最近では「ネントレ(ねんねトレーニング)」と呼ばれる、赤ちゃんを1人で寝かせるトレーニングが注目されています。
【夜泣きの原因】赤ちゃんが夜泣きをする理由は何?
夜泣きの原因は明らかになっていませんが、睡眠サイクルや生活リズム、脳の未発達などが関わっていることが考えられます。
ここでは、夜泣きをする主な理由について詳しく紹介します。
不快なことがある
赤ちゃんは言葉で気持ちを表現できないため、何か不快なことがあると泣いて教えてくれます。
夜泣きもその一つで、以下のような原因が考えられます。
- おむつ:濡れている、汚れている
- 消化管:空腹、便秘、ゲップやお腹のガス
- 睡眠環境:暑い、寒い、布団や服の素材が肌に合わない、部屋が明るい、うるさい・静かすぎる
- 体調:歯が生えてきてかゆい、風邪を引いている、体がかゆい
夜泣きをする際は、赤ちゃんをよく観察し、これらの原因を一つずつ確認しましょう。
睡眠サイクルが未発達
赤ちゃんは、大人と比べて睡眠サイクルが未発達で、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)を短いサイクルで繰り返しています。
そのため、ちょっとした刺激で簡単に目が覚めてしまい、夜泣きにつながることがあります。
また、生まれたばかりの赤ちゃんは体内時計がまだ発達しておらず、昼夜のリズムがはっきりしていません。
そのため、昼夜が逆転してしまい、夜に活発に活動してしまうこともあります。
成長とともに、体内時計が発達し、昼は起きて夜寝るという規則正しいリズムを身につけていきます。
しかし、生活リズムが不規則な状態が続くと、なかなか体内時計が機能せず、夜泣きが続く場合があります。
脳の発達が未熟
赤ちゃんは、成長に伴い「遊びたい」「もっとおっぱいを飲みたい」といった欲求を強く感じるようになります。
これは、感情を司る大脳辺縁系が急速に発達しているためです。
その一方で、欲求をコントロールする前頭葉はまだ未発達なため、赤ちゃんは自分の気持ちをうまくコントロールできず、夜泣きをしてしまうことがあります。
また、生後5ヶ月を過ぎると、音や光、人の表情、動き、話し声などさまざまなことを認識できるようになります。
大人は寝ているときに日中の記憶を整理しますが、赤ちゃんの脳は発達が未熟なため、日中に受けた刺激が強すぎると処理しきれずに覚醒してしまうことがあります。
特に、強い刺激を受けた日や、新しい環境に慣れない日は、夜泣きが起こりやすくなります。
夜泣きの対策・対処法
ここでは、夜泣きの対策や対処法について紹介します。
睡眠環境を整える
赤ちゃんが夜泣きをする場合は、その原因を取り除いて睡眠環境を整えてあげることが大切です。
まずは、赤ちゃんの様子をよく観察し、不快に感じていることはないか確認しましょう。
おむつが汚れている、お腹が空いているといった分かりやすい原因だけでなく、以下の点にも気をつけましょう。
赤ちゃんが眠るときは、部屋を真っ暗にすることが大切です。
わずかな刺激でも眠れなくなる場合があるため、夜間の授乳時も、部屋全体を明るくするのではなく、間接照明を使って手元だけを照らすようにしましょう。
室温は季節問わず18〜22℃前後、湿度は60%程度が目安です。
汗をかいていたら薄着にする、足が冷たいときは保温するなど衣服で調節してあげましょう。
生活リズムを整える
夜泣きを解消するためには、赤ちゃんの生活リズムを整え、体内時計を正常に働かせることが大切です。
まずは、毎日決まった時間に寝かしつけ、決まった時間に起こすことを心がけましょう。
食事やお風呂の時間もできるだけ毎日同じ時間にすると、体がリズムを覚えやすくなります。
体内時計は光によって調節されるので、朝起きたらカーテンを開けて部屋を明るくし、夜は照明を落として暗い環境を作ると、生活リズムが整いやすくなります。
睡眠前のルーティンをつくる
寝る前に、いつも同じことを繰り返す習慣をつけるのもおすすめです。
たとえば、【お風呂→授乳→歯磨き→絵本→おやすみの挨拶】など、無理なく続けられることをしてみましょう。
睡眠前のルーティンを作ることで、赤ちゃんは「これをしたら寝る時間だ」と理解し、心身ともにリラックスして眠りにつきやすくなります。
また、安心して眠ってもらうために、睡眠前のルーティンの中で十分なスキンシップをとることも大切です。
日中に戸外で遊ぶ
日中に日光を浴びて活動すると、精神を安定させる働きのある『セロトニン』というホルモンの分泌が高まります。
セロトニンは、睡眠を促し、生活リズムを調節する『メラトニン』というホルモンの材料になります。
そのため、日中に戸外で遊ぶようにすると、夜に自然と眠気を感じて良質な睡眠が取れるようになるでしょう。
日中に戸外へ出るのが難しいときは、午前中にカーテンを開けて日光を浴びる時間を作るのがおすすめです。
泣いてもすぐに抱っこしない
赤ちゃんは眠っている間にも、泣きながら寝言を言うことがあります。
このような場合、すぐに抱っこしたり、あやしたりしてしまうと、かえって睡眠を妨げてしまう可能性があります。
また、眠りにつくために特定の行動(たとえば、抱っこ、授乳など)が必要となる状態を「入眠時関連型の夜泣き」といいます。
夜泣きをしたとき、すぐに抱っこをしてあやすと、それが習慣になり、赤ちゃんが自分で眠りにつくことが難しくなる場合があるので注意が必要です。
赤ちゃんが泣いていても、すぐに抱き上げずに、少し様子を見てみましょう。
生理的な原因(空腹、おむつ交換など)や緊急事態でない限りは、様子を見ながら、優しく声をかけたり、背中をトントンしたりして、赤ちゃんが自分で泣き止むのを待ちましょう。
夜泣きについての気になる質問
ここでは、夜泣きについての気になる質問と回答を紹介します。
夜泣きはどのくらいの時間放置(様子見)しても良いですか?
明確に推奨されている時間はありません。
ネントレの方法にはさまざまなものがあり、赤ちゃんを泣かせっぱなしにすることを推奨するメソッドも存在します。
一部の小児科医は、このような方法を支持している場合もあります。
その一方で、赤ちゃんとの愛着形成に悪影響を及ぼす可能性があるという意見もあり、泣かせ続けるメソッドに問題があると考える医師もいます。
2歳になっても夜泣きがなくならない場合は病院に相談した方が良いですか?
夜泣きが落ち着く時期は、子どもによって大きく異なり、中には3歳や4歳頃まで続く子もいます。
一般的に、夜泣きが病気の症状であることはまれですが、以下の場合は、小児科医に相談することをおすすめします。
- 夜泣きが頻繁で、お子さんやご家族の生活に支障が出ている場合
- 夜泣きと同時に、発熱や食欲不振などの症状が見られる場合
- 夜泣き中に異常な行動が見られる場合
- 夜泣き以外にも発達に気になる点がある場合
夜泣きのたびに母乳やミルクをあげても良いですか?
夜間授乳が必要なお子さんの場合は、空腹が原因で泣いている可能性があるため、必要に応じて母乳やミルクをあげるようにしましょう。
ただし、離乳食が始まり、身長や体重などの発育に問題がないお子さんの場合は、夜泣きのたびに母乳やミルクを与える必要はないことが多いです。
赤ちゃんは、乳首を吸うことで安心感を得て眠りやすくなることがあります。
しかし、夜泣きをするたびに授乳を続けていると、「入眠時関連型の夜泣き」と呼ばれる状態になり、乳首がないと寝付けなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。
夜泣きは赤ちゃんの成長過程!無理せず前向きに乗り切ろう!
夜泣きの理由は赤ちゃんによって異なるため、まずは赤ちゃんの様子を確認し、考えられる原因を取り除いてあげましょう。
ただし、赤ちゃんの夜泣きは原因がわからない場合も多く、何をしても寝ないことも少なくありません。
夜泣きは成長過程のため自然に落ち着いてきますが、夜泣きがつらい場合は無理をせず、家族や周りの人にサポートしてもらうようにしましょう。
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