生まれてすぐの赤ちゃんの口腔内には、虫歯の原因となる虫歯菌はいません。
しかし、大人から虫歯菌が移ったり、歯磨きがうまくできなかったりすると、虫歯になってしまう可能性があります。
この記事では、赤ちゃんの虫歯について、いつからなるのか、うつるのか、見分け方、予防方法などを詳しく解説します。
歯学部卒業後、都内大学病院歯科口腔外科にて勤務。麻酔科研修を経て総合病院口腔外科・一般歯科にて口腔外科学会認定医として従事する。その後、2014年にデンタルクリニックビジューを開院。オーラルケアに関する事だけではなく、栄養学、漢方など幅広い視点で患者様の健康をサポートしている。現在は、一児の母としての経験を活かし、子供の歯やお口の健康についても積極的に情報を発信している。
赤ちゃんはいつから虫歯になる?うつる?
生まれたばかりの赤ちゃんには虫歯菌はいません。
むし歯の原因になる「ミュータンス菌」は、ツルツルした歯の面にだけくっつく性質を持っているため、まだ歯の生えていない赤ちゃんの口腔内には存在しないのです。
この虫歯菌は、おもに親や家族とのスキンシップや日常生活の中で唾液を介して感染します。
最初の乳歯が生えた瞬間から虫歯のリスクが発生し、特に『感染の窓』と呼ばれる生後19ヶ月(1歳7ヶ月)〜31ヶ月(2歳7か月)の時期に虫歯に感染する可能性が高まるといわれています。
赤ちゃんの虫歯の見分け方
通常虫歯というと、黒い穴のようなものを想像しますが、赤ちゃんの初期虫歯は白く濁るのが特徴です。
これは「脱灰(だっかい)」と呼ばれる、歯の表面が酸によって溶ける状態によるものです。脱灰が持続した状態が続くと、歯の表面に穴があいてむし歯になります。
脱灰は目に見えないミクロの穴が空くので、痛みやしみるなどの自覚症状がなく、発見が遅れてしまいがちです。
また、乳歯は永久歯に比べて歯質が柔らかく、エナメル質や象牙質は約半分の厚さしかありません。そのため、乳歯は虫歯になりやすく、一度虫歯が進行すると神経まですぐに到達してしまいます。
下記のような症状が見られた場合は、虫歯の可能性があるので、早めに歯科医院を受診しましょう。
- 歯の一部が白く濁っている
- 歯に白い斑点や茶色い斑点がある
- 歯に穴が開いている
- 歯茎が赤く腫れている
- 食べ物をかむのを嫌がる
- いつもよりぐずぐずしている
【虫歯予防】赤ちゃんの虫歯を防ぐためにやるべきこと
赤ちゃんの虫歯は、適切なケアを行わないと、あっという間に進行してしまいます。
早期発見・早期治療が重要ですが、そもそも虫歯にならないように予防することが大切です。ここでは、赤ちゃんの虫歯を防ぐためにやるべきことを紹介します。
毎食後しっかり歯磨きする
乳歯が生えてきたら、歯ブラシを使って赤ちゃんの歯磨きを始めましょう。
下の前歯しか生えていない生後6ヶ月頃は、虫歯のリスクはさほどないので、そこまで気をつけなくても大丈夫です。
歯磨きの姿勢や歯ブラシの感触などに慣れさせることを目標にしましょう。
注意が必要なのは、乳歯の奥歯(臼歯)が生え揃ってくる1歳半頃。この頃になると虫歯菌の棲みつく場所が増え、かつ甘いものを食べる機会が増えるため、感染のリスクが高まります。
磨き残しになりやすい歯と歯の間や、奥歯などをしっかり歯磨きするようにしましょう。
\仕上げ磨きのやり方についてはこちら/
甘いおやつやジュースを控える
虫歯予防のためには、甘いおやつやジュースはなるべく控えた方が良いでしょう。 特に、糖分が多く歯にくっつきやすいお菓子は虫歯リスクが高くなります。
(注意が必要なお菓子)
ケーキ、チョコレート、キャラメル、キャンディーなど
どうしても甘いものを与えたい場合は、おやつの時間を決めましょう。
おやつをダラダラ食べると、口腔内に常に糖が存在し、虫歯菌が酸を作り出す時間が長くなるため、虫歯リスクが高くなります。
おやつの時間を決めて、食事と間食のメリハリをつけることが大切です。
キスや口移しをしない
赤ちゃんとのスキンシップは、愛情を育む大切なコミュニケーションです。
しかし、虫歯菌は唾液を介して赤ちゃんに移ってしまうため、スキンシップの方法によっては虫歯のリスクを高めてしまう可能性があります。
口移しやキスは控えましょう
虫歯菌は唾液を介して感染するため、口移しやキスは虫歯菌を赤ちゃんに移してしまう可能性が高いです。
スキンシップは、抱っこやおんぶ、手遊びなど、口を使わない方法にしましょう。
箸や食器の共有は控えましょう
箸や食器、コップやストローを共有することで、虫歯菌が赤ちゃんに移ってしまう可能性があります。
赤ちゃん専用のものを用意し、大人との共有は避けましょう。家族で同じ食器を使う場合は、使用後はしっかりと洗浄・消毒することが重要です。
食べ物を冷やすときは息を吹きかけないようにしましょう
食べ物を冷やすために息を吹きかける行為も、虫歯菌を赤ちゃんに移してしまう可能性があります。スプーンで混ぜたり、扇いで冷やすなど、別の方法で代用しましょう。
家族全員の口腔ケア
虫歯は、虫歯菌が作り出す酸によって歯が溶けて起こる感染症です。
この虫歯菌は、唾液を介して人から人へと感染します。特に家族間での感染リスクは高く、虫歯菌が多い家族ほど、赤ちゃんの虫歯リスクも高くなります。
家族間での虫歯菌感染を完全に防ぐことは難しいですが、家族全員が口腔ケアを徹底することで、虫歯菌を減らし、感染リスクを低減することができます。
赤ちゃんが虫歯にならないよう、家族全員で口腔ケアを意識して、虫歯菌の少ない環境を作ることが大切です。
定期的に歯医者に検診にいく
赤ちゃんの虫歯予防には、定期的な歯科検診が重要です。
最初の乳歯(下の前歯)は生後6ヶ月頃に生えていきます。
歯の本数が少ないうちは虫歯リスクは低いですが、虫歯の有無に関わらず、歯が生えてきたら定期検診を受けましょう。
特に重要なのが、生後19ヶ月(1歳7ヶ月)〜31ヶ月(2歳7か月)の「感染の窓」と呼ばれる時期です。この時期は虫歯菌への感染リスクが特に高くなります。
赤ちゃんの虫歯は進行が早く、自覚症状が出にくいため、早期発見・早期治療のためにも定期検診が重要です。
歯科検診では、赤ちゃんだけでなく保護者の方にも、正しい歯磨き方法や虫歯予防に関する指導が行われます。 これは、保護者にとっても正しい口腔ケアの知識を身につける良い機会となるので、積極的に参加しましょう。
「感染の窓」と言われる1歳半〜3歳は特に虫歯に注意しよう!
生後19ヶ月(1歳7ヶ月)〜31ヶ月(2歳7か月)までは、虫歯菌が特に繁殖しやすい「感染の窓」と呼ばれる時期です。
この時期は虫歯になりやすいので、特に注意が必要です。
逆に、この時期に気をつけながら乳歯が生えそろう3歳までしっかり虫歯予防すれば、大人になってからも虫歯になりにくいと言われています。
今回紹介した虫歯予防方法をしっかり実践し、ぜひ家族みんなで口腔ケアに取り組んでください。
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