離乳食が始まり、いつまで頑張って母乳をあげるかを悩むママは多くいます。

生後1歳〜1歳半ごろまでに離乳が終了する赤ちゃんが多いのですが、実際は赤ちゃんが欲しがらなくなるまで授乳を続けても問題ありません。

この記事では、母乳をいつまであげるべきかや、母乳をやめるメリット、やめる際の注意点などを紹介します。

母乳での育児をやめるか続けるか悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。

監修医師 板橋中央総合病院 院長  阿部 一也
阿部 一也

阿部 一也

橋中央総合病院 医長

東京慈恵会医科大学医学部医学科 卒業 現在は板橋中央総合病院勤務 専門は産婦人科

阿部先生の監修した記事一覧
https://kodomonosiro.jp/specialist/specialist-2180/

目次

母乳をいつまであげるかはママが決めてOK

母乳をいつまであげるかは、ママが決めてよい内容です。
ママや赤ちゃんの体調、家庭の事情を考えて、いつまで続けるかを決めるとよいでしょう。

日本のママたちがいつまで母乳を続けているかについて、公式な統計は出されていません。しかし、1歳6ヶ月地点で授乳を続けているママは32.8%というデータがあります。つまり、1歳6ヶ月で卒乳している赤ちゃんは約7割、母乳もしくはミルクを飲んでいる赤ちゃんは約3割です。

参考:卒乳に関する保護者の意識調査,井出正道,成宮秀子,島崎絵美,,熊谷純子,朝田芳信,小児歯科学雑誌 54(4): 462−469 2016

しかし、日本では1歳6ヶ月地点で卒乳している赤ちゃんが多い一方で、世界的には2歳以上まで母乳を続けることが推奨されています。

厚生労働省とWHO(世界保健機関)、米国小児科学会による、母乳をいつまで続けるべきかの見解は以下の通りです。

<母乳をいつまで続けるべきかの見解ト>
  • 厚生労働省:成長の過程を踏まえて評価し、母親などの考えを尊重する
  • WHO(世界保健機関):2歳までもしくはそれ以上続ける
  • 米国小児科学会:希望するなら2歳以上まで母乳を続けてもよい

日本は「母親などの考えを尊重する」としているため、ママと赤ちゃんの状況に合わせていつまで続けるかを決めるとよいでしょう。

なお、母乳をやめる際は、赤ちゃんが1日3回離乳食を食べており、身長・体重などの成長が母子手帳の「乳幼児身体発育曲線」に沿っている必要があります。

参考:授乳・離乳の支援ガイド,「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会
参考:母乳育児 WHO
参考:母乳育児,アメリカ小児科学会

母乳は最長でいつまで出る?

赤ちゃんが乳首を吸って飲む限り、母乳は出続けます。

WHO(世界保健機関)が2年以上の母乳育児継続を推奨していることからも、少なくとも2年以上母乳が出ることは明らかです。

なお、1歳~1歳半ごろに母乳をやめる人が多い日本でも、3歳や4歳まで母乳をあげている人はいます。

母乳を長く飲んだ子はどうなる?

母乳を長く飲んだ子は感染症に強いといわれています。

具体的な内容は、以下の通りです。

<母乳を飲んだ子の特徴>
  • 生後6ヶ月まで完全母乳で育った赤ちゃんは、母乳とミルクの混合栄養や完全ミルクの子どもよりも感染症にかかりにくい
  • 完全母乳育児の期間が長いほど、生後1歳までの感染症リスクや感染症による入院が少ない

ただし、生まれた時期、他にきょうだいがいるかなどの家庭環境も感染症のリスクに関係します。

ひとつの報告として参考にしてください。

母乳は最短で何ケ月で辞めていいの?

WHO(世界保健機関)では、生後6ヶ月間は完全母乳を推奨しており、その後は母乳を続けながら適切な補助食品(ミルクや離乳食)を与えるように推奨しています。

そのため、最短でも生後6ヶ月までは母乳を続けるのが望ましいでしょう。

また、生後の経過月数だけでなく、以下のようなタイミングで母乳をやめることを検討するママもいます。

母乳をやめることを検討するタイミング
  • 仕事に復帰する
  • 次の妊娠を考えている
  • くり返す乳腺炎がつらい
  • 夜間授乳による睡眠不足がつらい
  • おっぱいなしで寝付ける日が増えてきた
  • 赤ちゃんに歯が生えておっぱいを噛まれるのがつらい
  • 赤ちゃんが1日3回離乳食をしっかり食べられるようになった

仕事復帰やおっぱいを噛まれるのがつらいなど、家庭ごとにさまざまな理由で母乳を終了していることが分かります。

もし「今のタイミングで母乳をやめて大丈夫かな?」と不安に思うなら、自治体の乳幼児健診や子育て相談、かかりつけの小児科などでぜひ相談してみてくださいね。

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母乳を続ける3つのメリット

離乳食を食べられるようになっても母乳を続けるメリットは、以下の通りです。

<母乳を続けるメリット>
  • 赤ちゃんに栄養や免疫物質を与えてあげられる
  • ママががんになるリスクを減らせる
  • 赤ちゃんとママのふれあいの場を維持できる

順番にみていきましょう。

赤ちゃんに栄養や免疫物質を与えてあげられる

赤ちゃんが1歳を超えても、母乳には多くの栄養や免疫物質が含まれています。

「1歳を超えたら、母乳にはもう栄養がない」と考える人もいますが、WHOは「母乳は、生後1年目の後半には乳児の栄養必要量の半分以上を、生後2年目には1/3まで供給できる」と明言しています。

成長するにつれて離乳食からの栄養も必要になりますが、出ている限り母乳には豊富な栄養が含まれているのです。

また、体調が悪くて食事や水分が取れない時も、母乳なら飲める赤ちゃんは珍しくありません。

そのため、栄養や水分を取らせる方法の1つとして授乳を続けるママもいます。

ママががんになるリスクを減らせる

授乳がママの乳がんや卵巣がんのリスクを低下させるという、以下のような報告もあります。

<授乳によって減らせるリスク>
  • 乳がん:授乳の経験がある人や授乳の期間が長い人はリスクが低い
  • 卵巣がん:母乳育児をしている人や授乳の期間が長い人はリスクが低い

授乳は赤ちゃんだけでなく、ママの健康にもメリットがあるのです。

出典:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版,日本乳癌学会
出典:母乳育児と卵巣がんリスクの関連 JAMA Oncol . 2020 Jun 1;6(6):e200421. doi: 10.1001/jamaoncol.2020.0421. Epub 2020 Jun 11.

赤ちゃんとママのふれあいの場を維持できる

「ゆっくりと赤ちゃんと触れ合う時間を持ちたい」「赤ちゃんをたっぷり甘えさせてあげたい」と、1日1回などに回数を減らして授乳を続けるママもいます。

赤ちゃんがハイハイをしたり歩けるようになったりすると、抱っこが当たり前だった時期よりも赤ちゃんとママのスキンシップは自然に減少します。

授乳時間を「ふれあいの場」と考え、授乳を続けるのもひとつの考えです。

また、授乳によって愛情ホルモンとよばれるホルモン「オキシトシン」が分泌されます。

オキシトシンにより、ママの不安感の軽減や赤ちゃんとの心理的な結びつきも期待できます。

母乳をやめる6つのメリット

母乳をやめるメリットは、以下の通りです。

<母乳をやめるメリット>
  • 離乳食をよく食べるようになる
  • 夜起きなくなる
  • 虫歯のリスクを減らせる
  • おっぱいトラブルを減らせる
  • 赤ちゃんを預けやすくなる
  • 次の妊娠をしやすくなる

先ほど紹介した「母乳を続けるメリット」よりも多くの種類を紹介していますが、決して「今すぐに母乳をやめるべき」という意味ではありません。

これから紹介するメリットは、現在の状況や赤ちゃんの性格と合わせて、母乳を続けるかどうかの参考にしてください。

離乳食をよく食べるようになる

日中の授乳回数が多い場合、母乳をやめたり減らしたりすると、赤ちゃんのお腹がしっかりと空くようになります。

個人差や現在の成長段階によって異なりますが、母乳をやめると離乳食をよく食べるようになる可能性はあります。

食後の母乳を欲しがって離乳食を食べない場合は、母乳をやめたり減らしたりするのを検討してもよいでしょう。

夜起きなくなる

おっぱいで寝かしつけている場合、目が覚めたり、眠りが浅くなったりすると「おっぱいをくわえたい」と泣いてママを起こす赤ちゃんは珍しくありません。

しかし、断乳すれば赤ちゃんはおっぱいがなくても自分で眠るようになります。
結果的に「夜はしっかりと眠り、昼間は元気に活動する」という生活リズムも整います。

断乳によって生活リズムが整えば徐々に夜起きる日が減り、いずれはママと赤ちゃんの両方がぐっすりと朝まで眠れるようになるでしょう。

虫歯のリスクを減らせる

日本小児歯科学会は「成長してからも母乳を飲む子どもは、母乳が口の中に長く残り続けることで虫歯のリスクが上がる」としています。

歯磨きをすれば虫歯のリスクは減らせますが、気になる場合は断乳を考えてよいかもしれません。

おっぱいトラブルを減らせる

母乳に関する以下のようなトラブルは、断乳によって軽減できます。

<おっぱいトラブルの例>
  • 赤ちゃんの歯が生えて、授乳時に噛まれるのが痛い
  • おっぱいを飲む量が減り、張りや痛みが出る

断乳直後はおっぱいの張りや痛みが出やすいのですが、完全に終了すればほとんどのおっぱいトラブルは減ると考えられます。

赤ちゃんを預けやすくなる

母乳を与えている間、赤ちゃんとママはなかなか離れられないものです。

母乳をやめることで、保育園やご家族に赤ちゃんを預けやすくなります。

職場への復帰や、買い物、美容院などにも行きやすくなるでしょう。

次の妊娠をしやすくなる

授乳をしている間は「プロラクチン」というホルモンが分泌されるため、排卵が起こりにくい状態です。

授乳中の排卵や月経の再開時期には個人差がありますが、断乳すると1ヶ月半〜6ヶ月以内に月経が再開する人が多いといわれています。

妊娠希望があるのに月経が再開していない人は、母乳をやめれば排卵の再開が早まり、次の妊娠に備えられるでしょう。

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母乳をやめる「卒乳」と「断乳」の進め方

母乳をやめるには、以下2つの方法があります。

<母乳をやめる方法>
  • 卒乳:赤ちゃんが母乳を飲みたがらなくなるまで待つ方法
  • 断乳:時期を決めて母乳をあげるのをやめる方法

それぞれの方法について、進め方を説明します。

卒乳を待つ場合

「卒乳(自然卒乳)」は、赤ちゃんが自然に母乳を飲まなくなることです。

つまり、母乳をいつまで飲むかを赤ちゃん自身が決める方法ともいえます。

卒乳を待つ場合、赤ちゃんが欲しがるうちは母乳を与えるため、ママが「母乳はいつまであげる」と決める必要はありません。

赤ちゃんが自然に母乳を欲しがらなくなるまでたっぷりと授乳を楽しみましょう。

断乳をする場合

「断乳(計画的卒乳)」とは、ママが「母乳はこの日まで」と決めて授乳をやめることです。

離乳食から栄養が取れており、抱っこや遊び、話しかけなどで親子のスキンシップがとれていれば、断乳は決して悪いことではありません。

断乳を進める場合は、以下の手順で進めるとよいでしょう。

<断乳の手順>
  1. 母乳をいつまであげるかの期限を決める
  2. 赤ちゃんに「この日になったらおっぱいとバイバイね」と説明する
  3. 少しずつ授乳回数を減らしていく
  4. 決まった日にちになったら授乳をやめる

最初は外遊びやおやつを利用して、昼間の授乳から減らすとスムーズに進められます。
また、一気に授乳をやめにくい場合は、1回の授乳時間を少しずつ短くする方法もあります。

夜の授乳をやめる際は、パパに協力してもらう、背中をトントンするなどの方法を試すのもおすすめです。

母乳をやめる時に気を付ける5つのポイント

母乳をやめる時に気を付けたいポイントは、以下の通りです。

<母乳をやめるときに気を付けるべきポイント>
  • 離乳食や水分がしっかり取れているか確認する
  • 体調がよい時を選ぶ
  • スキンシップを取りながら授乳回数を少しずつ減らす
  • おっぱいトラブルに注意する
  • 断乳後は欲しがっても授乳しない

母乳をやめる選択をする際は、参考にしてください。

離乳食や水分がしっかり取れているか確認する

断乳の際は、赤ちゃんが母乳以外の方法で栄養や水分をとれるようにする必要があります。

以下のポイントを確認し、問題なければ母乳をやめることも検討してみましょう。

<断乳時の確認項目>
  • 離乳食が3回食べられているか
  • ストローやコップで水分がとれるか
  • 身長や体重が順調に増えているか

ただし、赤ちゃんには個性があるため、早く生まれた、成長がゆっくりなどの場合はまだ母乳が必要なケースもあります。

栄養に関する心配があるママは、検診や予防接種、育児相談などで母乳をいつまであげたらよいかを相談してみてください。

体調がよい時を選ぶ

母乳をやめる際は、体調のよいタイミングを選びましょう。

断乳にチャレンジしている間は赤ちゃんの機嫌が悪くなったり、夜寝付けずに親子ともに睡眠不足になったりしやすくなります。

熱中症リスクの高い真夏、感染症リスクの高い真冬も体調を崩しやすいため、避けると安心です。

断乳を始めたタイミングで体調を崩した場合は、一度授乳を再開し、体調が落ち着いてから改めて断乳した方がよいケースもあります。

赤ちゃんの体調をみながら、無理のない方法で進めましょう。

スキンシップを取りながら授乳回数を少しずつ減らす

授乳回数は、赤ちゃんの様子をみながら少しずつ減らしていきましょう。

先ほど触れたように、授乳をしていた時間は意識して外に出たり、赤ちゃんと遊んだりすると効果的です。

ママと見つめ合ったり、やさしく声をかけてもらえたりする授乳の時間がなくなると、赤ちゃんが淋しさを感じるケースは珍しくありません。

しかし、母乳をやめても抱っこや絵本、身体を使った遊びなど、赤ちゃんとスキンシップをとる方法はたくさんあります。

断乳の際は赤ちゃんとのスキンシップを増やし、「おっぱいがなくなってもあなたのことが大好きだよ」という気持ちをたっぷりと伝えてあげてください。

おっぱいトラブルに注意する

断乳時は一時的に母乳が余り、張りや乳腺炎が起こりやすくなります。

張りがつらい時の対処法は、以下の通りです。

<おっぱいトラブルの対処法>
  • 氷嚢や濡れたタオルでおっぱいやわきの下を冷やす
  • きつすぎるブラジャーは避ける
  • 張りがつらい時は、楽になる程度に搾る

溜まった母乳を全て搾ると新しく作られるため、分泌量はなかなか減りません。

できれば1~2日我慢をしてから絞ると、母乳の分泌を早めに抑えられます。
完全に母乳が止まるには数か月かかりますが、強い張りは2~3日で落ち着くケースが一般的です。

また、断乳を一気に行うのではなく、少しずつ進めるのもおっぱいトラブル予防に効果的です。

ただし、母乳の止まり方には個人差があるため、張りや痛みがつらい時は産院や自治体の助産師・保健師に相談しましょう。

断乳後は欲しがっても授乳しない

「この日になったらバイバイね」と決めたタイミングを過ぎたら、赤ちゃんがどれだけ泣いても授乳をしないようにしましょう。

赤ちゃんがおっぱいを忘れられない時は、外出して気分を変える、家族に協力してもらうなども効果的です。

性格による部分があるものの、多くの赤ちゃんは3日ほどすればおっぱいのことを忘れるといわれています。

ママもしっかりと心の準備をして、断乳の日を迎えるようにしましょう。

母乳をいつまで続けるかは赤ちゃんの様子を見てママが決めよう!

母乳をいつまであげるかは、赤ちゃんとママの健康状態や家庭環境で決めて大丈夫です。

母乳を続けるメリットは、赤ちゃんへの栄養補給やふれあいの機会を長く持てることです。

一方、母乳をやめるメリットは、離乳食の食べが良くなる、生活リズムが整いやすくなるなどが挙げられます。

母乳をやめる時は、徐々に回数や時間を減らしながら無理のないペースで進めるとよいでしょう。

赤ちゃんの栄養状態やママのおっぱいの状態が気になる場合は、1人で悩まずに産院や育児相談などを頼ってみてくださいね。

#母乳 #おっぱいいつまであげる #授乳期間

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