「ハンドリガード」とは赤ちゃんの発達・成長を示すサインのひとつです。
とても可愛らしいしぐさなので、動画や写真で残しておきたくなりますが、いつからいつまで見られるものなのでしょうか。
また、しない場合はどうすればよいのかも気になるところです。
この記事ではハンドリガードについて詳しく解説していきます。
武井 智昭
2002年 慶應義塾大学医学部卒業。2002年から2004年まで慶応義塾大学病院研修医。2004-2011 平塚共済病院 内科・小児科医長。2012年より神奈川県内のクリニックを経て、2017年なごみクリニック院長、2020年高座渋谷つばさクリニック院長(内科・小児科・アレルギー科)
武井先生の監修した記事一覧
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ハンドリガードとは?
ハンドリガードとは、英語のhand-regardから来ており「手(hand)をジッと見る(regard)」という意味です。
その意味の通り、赤ちゃんが自身の手をジッと見る様子を指します。
ハンドリガードとあわせてみられるしぐさ
赤ちゃんがハンドリガードをするようになると、以下のようなしぐさがみられることも多くあります。
- 手を上下させる
- 手をユラユラと揺らす
- 繰り返し手をグーパーする
- 手や指を舐めたり口に含んだりする
上記は一部で、お子さんによって異なるバリエーションがあることを覚えておきましょう。
赤ちゃんのハンドリガードが意味すること
ハンドリガードは、手の存在に気づき、それが自分の身体の一部であることを認識したことを意味します。
そこに至るには「見る力」と「身体を動かす力」の発達が必須です。
「見る力」の発達
一般的には新生児の時期を過ぎ、生まれて1ヶ月ほど経った頃に、何かに焦点を定めて、ジッと見ること(注視)ができるようになります。
赤ちゃんが手の存在に気づき、注視しているなら、見たいものとの距離を測り、焦点をあわせる「見る力」が向上したことを意味するのです。
また、生後2〜3ヶ月くらい経つと、動くものを目で追うようにもなります(追視)。
自分で動かしている手を目で追っているのは、追視をする力を身につけた証拠です。
「身体を動かす力」の発達
赤ちゃんが「今、見つめているもの(手)がどうやら自分のものらしい」と認識するのは、自らの意志で手が動くことに気づいたときです。
脳と運動機能を連動させて起こす「動かす力」の発達を通して、自分の身体の全容を認識していきます。
また、手や指を舐めたり口に含んだりすると、舌や唇からその感触を得られることから「これは自分のものだ」と確信していくのです。
同時に、手がどのような輪郭で、どのように動かせるものかという「ボディイメージ」も作っています。
自分のもので、自分で動かせるものだと認識した手をどんどん使っていくことで、見る&身体を動かす力が育まれていきます。
ハンドリガードをするのは、いつからいつまで?
赤ちゃんが不思議そうに自分の手を凝視するハンドリガード。
このかわいらしい様子が見られるのは、いつからいつまでなのでしょうか。
ハンドリガードをする時期は生後2ヶ月から5ヶ月くらい
ハンドリガードが見られるようになるのは生後2ヶ月頃が多く、ほとんどの場合、そこから長くても3ヶ月ほどでしなくなっていきます。
ただし、発達・成長には個人差があるので、はじめたのが2ヶ月より遅くても気にすることはありません。
いろいろな専門家が監修する子育てコラムを読むだけでも、それがわかるはずです。
短い期間に起こることなので、寝返りやハイハイ、あんよと同様、育児の中の貴重なイベントのひとつとして、動画や写真を撮影しておくことをおすすめします。
なお、生後半年以降にする手の動きの多くは手遊びで、ハンドリガードよりも複雑な動きが見られるようになります。
ハンドリガードをしないときはどうする?
ハンドリガードを始めるといわれている時期を大幅に過ぎても、する様子がないと、親御さんは心配になるでしょう。
その場合、後述するハンドリガードに代わるしぐさをしている可能性が考えられます。
また、頻度が少ない子なら、親御さんもずっと見ていられるわけではないので、タイミングが合わず見逃しているだけかもしれません。
ハンドリガードにつながる「身体を動かす力」を伸ばしたいとき、スキンシップによって外部から触覚を刺激すると効果的な場合も。
手をさすったり、ちょっと引っ張ってみたりすると、その刺激から「手を動かしたい」という気持ちにつながるケースがあるのです。
親御さんの中には、ハンドリガードが見られないことを発達障害と結びつけて考える方がいるかもしれません。
しかし、その関連を気にする必要はありません。
それでも不安な場合は、3〜4ヶ月児健診で相談をするとよいでしょう。
3〜4ヶ月児健診は任意健診ですが、身体測定のほか首のすわり、目の動きなどに問題がないかなどもチェックしてもらえます。
そのため、小児科医としては重要な健診と捉えているので、ぜひ受けていただきたいです。
3〜4ヶ月児健診の情報はお住まいの自治体の公式サイトで確認してみましょう。
よい機会なので、ハンドリガード以外のことでも、我が子の発育状態や育児について気になることがあれば相談することをおすすめします。
ハンドリガードに代わるしぐさ
赤ちゃんの成長を示すハンドリガードですが、必ずみんながするわけではなく、また、それに代わるしぐさをしている可能性もあります。
以下のようなしぐさをしていないか注意して見てみましょう。
おもちゃをジッと見る
赤ちゃんがジッと見るのは手とは限りません。代わりにおもちゃを見ていませんか?
赤ちゃんは興味を示したものを注視することが多いので、おもちゃに限らず何かしらを集中して眺めているケースがあります。
その様子が見られるなら、見る力が着実にアップしていると思ってよいでしょう。
見ているものを動かすと目で追うなら、追視もできるようになっています。
ジッと見ているものに向けて手を延ばすなら、身体を動かす力も備わってきている証拠です。
フットリガード
手ではなく足(foot)をジッと見ることを「フットリガード」といいます。
その際、両足を手でつかみ持ち上げて開脚したり、つま先を口に持っていったりといった動作をすることもあります。
このような動作をするのは生後6ヶ月以降が多く、ハンドリガードが見られないことにヤキモキしていたら、フットリガードを目の当たりにして驚いてしまうかもしれません。
また、下半身の力やお腹の筋肉がつかないとできない動作なので、身体のさまざまな部分の発達・成長を実感することができるでしょう。
ハンドリガードの時期に気をつけること
ハンドリガードの時期は、お子さんの可愛い姿を見ることができると同時に、着実に成長していることも認識できます。
ただ、気をつけなければいけないこと、注意点もあるので、おさえておきましょう。
指しゃぶり・拳しゃぶりを妨げない
ハンドリガードとあわせて、指を舐めるだけにとどまらず指しゃぶりをしたり、手をグーにして口に入れてしまう拳しゃぶりをする子もいます。
止めたくなる親御さんもいるかもしれませんが、手の存在を舌と唇で確認している最中なので、無理に止めないようにしましょう。
指しゃぶりはハンドリガードの時期を過ぎても続ける子どもが多いので、歯並びに影響するのではないかと気にする親御さんもいるかもしれません。
しかし、2歳頃までは影響はないといわれているので、心配しすぎなくて大丈夫です。
むしろ、指しゃぶりはメンタルを安定させる役割を担うこともあるので、無理に止めないほうがよいでしょう。
手を清潔にして爪を整える
この時期、手や指を口に入れるので、ヘルスケアのためにも清潔に保ってあげることが大切です。
赤ちゃんの肌は敏感なので、着色料や香料などが入っていない石鹸をぬるま湯で泡立てて洗ってあげましょう。
また、手で顔をさわることもよくありますが、まだ指先をうまくコントロールできないので、皮膚を爪で傷つけてしまうことがあります。
そのため、こまめに爪を切って、やすりで整えてあげることも忘れないようにしましょう。
場合によってはミトンをはめる
皮膚を傷つけないようにするには、爪を切って整えてあげることが最適ですが、何らかの理由で難しいときは手にミトンをはめてあげるのもひとつの手段です。
ミトンをすると、物や人に直接触れることができないので機能の発達を妨げると聞いたことがある人もいるかもしれません。
しかし、実際はほとんど影響はないと考えられています。
おもちゃは柔らかいものを選ぶ
注視から追視ができるようになり、気になるものに手を伸ばし、掴めるようになる過程で、赤ちゃんはいろいろなものに興味を持つようになります。
好奇心を刺激するおもちゃは成長をサポートするので、お気に入りを見つけてあげて、積極的に遊んでもらいたいところです。
この時期の定番おもちゃといえば、動かすと音がなるガラガラですが、まだ掴む力が弱いので、顔に落としてしまう可能性があります。
それでケガをしないように、布製など柔らかい商品もあるので、リスクのない素材のものを選ぶようにしましょう。
ハンドリガードをしなくても気にしすぎないこと
ハンドリガードは、赤ちゃんの見る力や身体を動かす力がステップアップしていることを知らせてくれます。
それだけに、しない場合は機能が伸長しているのか気になってしまうでしょう。
しかし、ただ単に見逃している可能性があり、また、フットリガードなど異なるしぐさで発達をうかがい知れるケースもあります。
お子さんの成長スピードは個人差があり、その仕方もそれぞれです。
同じ月齢の子と比べてしまうと、気になってしまうかもしれませんが、たいていの場合、親御さんの心配をよそに、着実に成長していくものです。
過度に気にせず、お子さんの成長を見守りましょう。
どうしても気になる場合は、健診などで専門家に相談したり、かかりつけの医師を受診したりすると安心です。
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