赤ちゃんが言葉を話すようになる道のりでの第一歩が「クーイング」です。
子育て中の親御さんは、言葉の発達につながるクーイングが、いつ頃はじまるのか気になるところでしょう。
また、クーイングと似ているようで異なる「喃語」についてもチェックしておきたいところです。
この記事では「クーイング」について説明します。
武井 智昭
2002年 慶應義塾大学医学部卒業。2002年から2004年まで慶応義塾大学病院研修医。2004-2011 平塚共済病院 内科・小児科医長。2012年より神奈川県内のクリニックを経て、2017年なごみクリニック院長、2020年高座渋谷つばさクリニック院長(内科・小児科・アレルギー科)
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赤ちゃんのクーイングとは?
言葉の発達の一環として赤ちゃんがする「クーイング」とは、どのようなものを指すのでしょうか。
クーイングが持つ意味・役割
乳児から幼児へと成長していく過程で、心身はさまざまな発達を遂げます。
それに伴い、言葉も発達していきますが、その第一段階にあたるのが「クーイング」です。
喉や声帯といった言葉を話すために必要な器官が発達していないと、クーイングを発することはできません。
すなわち、クーイングをしたら、言葉を話すための準備に着手したことを意味します。
また、クーイングは赤ちゃんが意識的に発するものではなく、息を吐くときに自然と出るものですが、ご機嫌なときに多いといわれています。
おむつが汚れた、お腹が空いたといったときに泣き声をあげますが、それ以外で、赤ちゃんの気持ちを表すサインとしての役割を果たすのがクーイングなのです。
クーイングの特徴は?
「クーイング(cooing)」の語源は、鳩の「くーくー」という鳴き声を意味する英語のCoo(クー)です。
特徴は以下の通りです。
- 「あー」「うー」「くー」といった濁音のない単音の発声
- 唇や舌を使わずに出す
- 泣き声とは異なる、ゆったりとした雰囲気の優しい声
クーイング特有の声を発するようになったら、着実に成長している証拠です。
発声練習を始めた記念に動画を撮影しておくと、後々よい思い出になるかもしれません。
クーイングの期間はいつからいつまで?
お子さんが言葉を話すようになるのを心待ちにしている親御さんは、いつ頃からクーイングをはじめるのか気になるところではないでしょうか。
大まかな期間をおさえておきましょう。
生後2ヶ月からが多い
心身の成長には個人差があり、それは言葉の発達段階であるクーイングも同様です。
そのため、あくまでも一般的にですが、生後2ヶ月頃からクーイングがみられるケースが多いといわれています。
この時期は、喉や下あごの構造が発達するのがひとつの理由です。
早い場合、生後1ヶ月頃に始めるケースもあります。
ほとんどの赤ちゃんが1歳くらいまでに終わる
ほとんどの赤ちゃんは、1歳頃にはすでにクーイングをしなくなっています。
多くの場合、生後4ヶ月くらいから、次のステップである「喃語(なんご)」への切り替えがはじまるからです。
クーイングと喃語の違いは?新生児が言葉を話すまでの経緯
クーイングができる段階から、発声するための器官がさらに発達すると、「喃語」へステップアップし、より言葉を話せる段階へ近づいていきます。
ここで、基本的にどのようなステップを踏み、話せるまでになるのか、一覧でチェックしましょう。
発する期間(目安) | 発する音・言葉 | 特徴 |
---|---|---|
生後2~5ヶ月頃 ※生後4ヶ月頃から喃語へ移行 | ★クーイング★ うー、あーなど単音の母音からはじまり、くーなどの単音の子音も発する | 自分の意思で基本的には発さない 唇・舌を使わない |
生後6~11ヶ月頃 | ★喃語(バブリング)★ ばぶー、あうあう、まんまんなど、2つ以上の音を組み合わせて発する | 自分の意思で発する唇・舌を使う |
生後12ヶ月(1歳)頃 | ママ、パパ、マンマ、ブーブなど、意味のある言葉を発する | 話せる単語が増え、言葉で主張するようになる |
2歳頃 | 「ママ、いる」など言葉をふたつ組み合わせて話す | おしゃべりができるようになる |
2~3歳頃 | なめらかに言葉が出るようになる | 簡単な会話なら成り立つようになる |
成長と共に、発音するために必要な器官が発達し、発せる音、言葉が増えて、会話ができるようになっていきます。
クーイングと喃語で異なる点は、1回に発する音の数がクーイングはひとつなのに対して、喃語はふたつ以上であること、そして喃語は赤ちゃん自身の意思で発していることです。
どちらも言葉に意味はありませんが、喃語の場合は「今〇〇って言った?」とそわそわしてしまう人は多いでしょう。
離乳食を始めて、口の周りの筋肉が鍛えられると、ますますバリエーションが増えるので「しゃべったかも!」と喜ぶことが増えるはずです。
実際、喃語の後の段階では、「ママ」など意味のある言葉を発するようになります。
発する音や言葉の幅が広がるほど、我が子の成長を実感できるでしょう。
喃語が出ないことは発達障害と関連がある?
言葉を話す前段階の喃語がなかなか出ないと、発達障害の可能性を考える親御さんがいるかもしれません。
発達障害は脳に起こる先天性の機能障害で、自閉スペクトラム症などで知られています。
発達障害は、人とコミュニケーションを上手くとるための社会性が身につきにくいのが特徴。
言葉の発達に支障が出るケースもあります。
ただ、この時期の言葉の発達にはかなり個人差があるため、発達障害が関連しているかどうかの診断は専門家でも難解です。
実はクーイングや喃語を経ずに、いきなり言葉が出るパターンもあるので、心配しすぎなくてもよいでしょう。
それでも、我が子が喃語を発さないことに不安を覚える方は、安心するためにも小児科などを受診しましょう。
クーイングにどうリアクションする?
クーイングは赤ちゃんが意思表示をするためのものではなく、ご機嫌なときに自然と出るものとされています。
しかし、コミュニケーションを取ることが目的で、相手に視線を向けるなどしながらクーイングをしている、という考えもあります。
実際のところはわかりませんが、クーイングをしたら、その声を真似したり、「うんうん」とやさしく応えてみたりしましょう。
保護者がリアクションすると、お子さんは「反応してくれた!」とわかり、心のつながりが深まっていくとされています。
クーイングしないときはどうする?
周りの月齢が同じくらいの赤ちゃんみんながクーイングを始めたのに、我が子にその兆候がないと不安になってしまうでしょう。
始める時期には個人差があるので、心配し過ぎることはありませんが、気になる場合は、以下のような方法を試してみましょう。
クーイングしなくても、積極的におしゃべりする
赤ちゃんがゆくゆく言葉を話せるようになるために、おさえておきたいポイントは、言葉に興味を持ってもらうことです。
親御さんをはじめとする周りの人たちは、積極的に話しかけるようにしましょう。
クーイングをしなくても、大人がおしゃべりする様子を見つめるといったリアクションがあるなら大丈夫。
コミュニケーションする力はきちんと身につけています。
大人がおしゃべりした分、赤ちゃんはその様子を見たり、聴いたりして、言葉を話すために必要な材料をインプットしているので、決して無駄にはなりません。
注意点としては、覚えてほしくない乱暴な言葉を使わないように気をつけることです。
もしも、おしゃべりの声や日常生活で起こる大きめの音に対して、視線や顔を向けるなどの反応がない場合は、聴覚に問題があるのかもしれません。
先天性難聴が原因でクーイングをしない可能性もあるので、生後間もない頃に病院で「聴覚スクリーニング検査」を受けていないなら、受けてみましょう。
聴覚スクリーニング検査は、睡眠中の赤ちゃんに音を聞かせ、機器で反応をみるものです。
検査を受けた当時は問題がなかったはずなのに、音への反応がない場合は、ほかの原因があるのかもしれません。
気になる場合は医師に相談しましょう。
新しい経験で刺激を与える
新しいことを経験させることも、言葉の発達をサポートするために重要です。
外に出て、見たことのない花を見たり、肌に風を感じたり、音の出るおもちゃで遊んでみたり。
このように五感を刺激することで、赤ちゃんはいろいろな感情を抱けるようになります。
それを表現したいという気持ちが言葉の発達につながるのです。
周りの大人がもたらす「刺激を受ける機会」を利用して、赤ちゃんは自らいろいろなことに興味を持つようになります。
お子さんの世界を広げるために、大人はどんどん新しい体験のきっかけづくりをしましょう。
クーイングは我が子との会話への第一歩
育児中は、身長が伸びたり体重が増えたりする成長も嬉しいですが、言葉を話せるようになったときの喜びはひとしおです。
クーイングをするようになったら、我が子と会話ができる日々が近づいたといえます。
お子さんがクーイングをしたら、真似したり返事をしたりして、応えてあげましょう。
赤ちゃんは話しかけられて、その相手の様子を観察しているうちに、声の出し方や言葉を覚え、やがて話せるようになっていきます。
「言葉を話せるようになったら、どんなおしゃべりをしようか、あの遊びもできるな」と、日々わくわくしながら、お子さんと笑顔で過ごしましょう。
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