児童福祉法では、生まれてから満1歳未満までの子を乳児、満1歳から小学校就学までの子を幼児と呼びます。
つまり1歳は赤ちゃんから子どもになる時期なのです。

1歳頃になると、身体の発達だけではなく、できることも増え、さまざまな面で成長が見られます。

この記事では1歳児の発達・成長やお世話の方法について解説します。

監修医師 高座渋谷つばさクリニック院長 武井 智昭
武井 智昭

武井 智昭

2002年 慶應義塾大学医学部卒業。2002年から2004年まで慶応義塾大学病院研修医。2004-2011 平塚共済病院 内科・小児科医長。2012年より神奈川県内のクリニックを経て、2017年なごみクリニック院長、2020年高座渋谷つばさクリニック院長(内科・小児科・アレルギー科)

目次

1歳児の発達と成長

生まれてから1年経つと、体つきが変わり、運動能力もアップするため、行動範囲が広がります。

言葉に関連する成長もあり、我が子からますます目が離せなくなる時期です。

その変化を具体的に見ていきましょう。

1歳0ヶ月・1歳3ヶ月・1歳7ヶ月の体重と身長

1歳頃の子どもの体重と身長の変化は以下の通りです。

男子1歳0ヶ月~1歳1ヶ月未満1歳3ヶ月~1歳4ヶ月未満1歳7ヶ月~1歳8ヶ月未満
体重(kg)7.68~11.048.19~11.758.86~12.71
身長(cm)70.3~79.673.0~82.876.5~86.9
女子1歳0ヶ月~1歳1ヶ月未満1歳3ヶ月~1歳4ヶ月未満1歳7ヶ月~1歳8ヶ月未満
体重(kg)7.16~10.487.61~11.128.20~11.99
身長(cm)68.3~77.871.1~81.074.8~85.3
参考:厚生労働省「平成22年乳幼児身体発育調査 一般調査及び病院調査による身体発育値」

1歳を過ぎると体重の増加は鈍くなり、ふっくらした赤ちゃんらしい体型から、すっきりとした体型に変化していきます。

発育には個人差があるので、お子さんの身長や体重が上記の数値内でなくても、大きな差がない限り、気にしすぎる必要はありません。

それでも気になる場合は、小児科医など専門家に相談してみましょう。

ひとり歩きできる

満1歳頃になると半数くらいの子どもは、ひとり歩きができるようになります。

厚生労働省が実施した調査結果は以下の通りです。

年 月 齢ひとりすわり(%)はいはい(%)つかまり立ち(%)ひとり歩き(%)
1年0~1ヶ月未満99.696.997.349.3
1年1~2ヶ月未満97.296.771.4
1年2~3ヶ月未満98.999.581.1
1年3~4ヶ月未満99.492.6
1年4~5ヶ月未満99.5100.0
参考:平成22年乳幼児身体発育調査「一般調査による乳幼児の運動機能通過率」

この調査での「ひとり歩き」は、何にもつかまらず、2、3歩あるいた場合としています。

生後1年0〜1ヶ月未満で、ほとんどの子どもがつかまり立ちをして、半数近くはひとり歩きをするようになるのです。

1歳半を目前にする頃には、ひとり歩きをする子どもが100%となっており、成長を感じられるでしょう。

とはいえ、成長には個人差があるので、「ほかの子どもが歩いているのに、うちの子はまだつかまり立ち」という場合でも、心配しすぎることはありません。

言葉が出る

1歳を過ぎると、1語以上の言葉を話せる子どもが半数を超えます。

年 月 齢単語を言う(%)
1年0~1ヶ月未満57.6
1年1~2ヶ月未満69.9
1年2~3ヶ月未満79.1
1年3~4ヶ月未満86.1 
1年4~5ヶ月未満88.8
1年5~6ヶ月未満89.1
1年6~7ヶ月未満94.7
参考:平成22年乳幼児身体発育調査「一般調査による乳幼児の言語機能通過率」

1歳半を過ぎる頃にはほとんどの子どもが何かしらの単語を話すようになります。
初めて発する言葉が何か楽しみにしましょう。

言葉を理解して行動する

「単語を1、2個話せる程度なら、言葉はまだ理解できないはず」と思うかもしれません。
しかし、1歳頃の子どもは簡単な言葉なら理解できます。

「とってきて」「ないないして(かたづけて)」などとお願いすると、行動に移せるのです。

言葉の理解は、親御さんの口元を見ながら真似することからはじまる場合も多々あるため、とにかく「話しかけること」を意識しましょう。

早口にならないようにハッキリと、聞き取りやすい高めの声で話しかけると効果的です。

自己主張をするようになる

自己主張がはじまる時期といえば、イヤイヤ期が思い浮かぶかもしれません。
また、イヤイヤ期は2歳からというイメージがある人は多いでしょう。

しかし実際は、1歳半頃になると自己主張の兆しが見えはじめる場合もあります。
気になるものを指差したり、そこに向かって歩いていったり、「ママ」と声に出したり。

あらゆる機能が発達して、できることが増えると、したいことや、こだわりたいことが実行できるようになるからです。

急いでいるときにトコトコと寄り道したり、「イヤ!」とご飯を拒否したり。
困ってしまうことは多々ありますが、自己主張は成長している証でもあるので、広い心で受け止めましょう。

1歳は離乳食を終わらせる時期

1歳から1歳半くらいまでは、生後5、6ヶ月頃からはじめた離乳食を終わらせ、ほぼ大人と同じものをサポート付きで食べられるようになる「完了期」と呼ばれる時期です。

この時期の離乳食について確認しましょう。

【完了期】離乳食の進め方

バナナほどの硬さの食べ物を歯茎でつぶして食べるようになったら、完了期の離乳食スタートのサイン。

子どもが自ら手づかみでご飯を食べようとしたり、スプーンやフォークを使いたがったりしていたら、いよいよ始めましょう。

完了期の離乳食は1日3回、大人の食事と同じ、朝食、昼食、夕食のタイミングで食べさせます。
手づかみで食べるなら、つかみやすい大きさにしてあげましょう。

スプーンですくうのに手間取っていたら大人がサポートを。
食べ物を口に詰め込みすぎないよう見守ることも必要です。

食事だけでは足りないようなら、おやつを1日1〜2回追加しましょう。
おやつと言っても甘いデザートではなく、パンやおにぎりなど主食になるものを選びます。

離乳食におすすめの食べ物

離乳食を用意する際、離乳食アプリなどで紹介されているレシピを参考にする人は多いかもしれません。

しかし、この時期は大人が食べるものを歯茎でつぶせる柔らかさにしたり、薄味にしたりすれば、子どもに与えてもOKな場合があります。

お米や小麦などの穀類やイモ類、野菜や果物類のほとんどは、食べさせて大丈夫です。

たんぱく質が摂れる油揚げは油抜きして、ウインナーなど肉類の加工食品は塩分や添加物を抑えた品質の良いものを与えましょう。

母乳やミルクから離乳食に切り替えていくと、カルシウムやビタミンDが不足しがちになるので、魚や肉類、大豆、きのこ類を食事に取り入れることが大切になります。

飲み物に牛乳を選ぶのは栄養を摂るための手段として有効です。

離乳食の注意点

完了期は、ひと手間加えれば大人と同じものを食べられる時期ですが、それでも食べさせてはいけないものがあります。

以下のものは与えないようにしましょう。

離乳食で食べさせてはいけないもの
  • 喉に詰まりやすいもの(もち、たこ、こんにゃくなど)
  • 食中毒のリスクがあるもの(刺身など)
  • 塩分・糖分を多く含むもの(魚肉ソーセージ、干物、魚卵、菓子パン、果汁100%ジュースなど)
  • 辛い、刺激が強いもの(こしょう、ソース、ウーロン茶、炭酸水など。にんにく・しょうがはほんの少しの風味付け程度で)
  • 消化しにくいもの(玄米、ごぼうなど。きのこ類はすりつぶすなどして与える)

また、アレルギーの原因となりやすい、そばやピーナッツを与える際は慎重になるべきです。
ごく少量を与えてみて様子をみましょう。

口元にかゆみが出やすいマンゴーやパイナップルは、この時期にあげるのは避けた方が無難です。
上記以外の食材でも、初めて食べさせるものは、まずは少しだけ与えてみて、様子をみるようにしましょう。

1歳児におすすめの遊び

歩けるようになり、手先も器用になりはじめる1歳頃は、遊びの幅が広がる時期です。

そんな時期におすすめの遊びを紹介します。

子どもと楽しくコミュニケーションを取れる時間にもなるので、日常に取り入れるようにしましょう。

ボール遊び

室内でも体を動かして遊ばせたいなら、ボールを使うとよいでしょう。
この頃は転がして遊ぶのがメインになるので、投げやすいゴムボールなどではなく、柔らかさや握りやすさを重視します。

スポンジのようなソフトな感触で、1歳の子どもの手でも握れる大きさのものをチョイスしましょう。

まだボールを転がせないなら、大人が転がしたボールを取ってくるという遊びでも楽しんでくれます。
大人の動作を真似していけば、いろいろなボール遊びができるようになるはずです。

手遊び

歌に合わせて手を動かす「手遊び」は、大人の真似をしていろいろなことを覚えていくこの時期にぴったりです。

定番の「むすんでひらいて」などを繰り返し見本で見せていくうちに、歌も手の動きも真似できるようになるでしょう。

手遊びは言葉の習得や手先の運動にもつながり、成長の促進にも一役買ってくれます。

お絵かき

遊びのラインナップとしてはずせないのがお絵かきです。

力をさほど入れなくても色がつくクレヨンを使うのがおすすめ。
握りやすく、口の中に入れにくいものを選びましょう。

1歳頃は何かを描こうというわけではないですが、クレヨンを動かすと色がつくという体験を面白がってくれます。

絵本

子どもの興味を引き、想像力を養うのに役立つ絵本。
1歳児に読んであげるのにおすすめなのが、日常生活に欠かせないことを題材にしたものです。

食事や歩くこと、歯磨きやトイレなど毎日することの中で、新しい発見をしたり、楽しいと思えるポイントが見つかったりしそうな絵本を選ぶとよいでしょう。

日頃お子さんが嫌がっていること、苦手としていることも、お気に入りの絵本を通せば好きになるかもしれません。

1歳の子どものお世話ポイント

1歳の子どもはさまざまな面で成長著しいですが、周りの大人のサポートは必要不可欠です。

この時期どのようにお世話をすればよいか子育てのポイントを見ていきましょう。

コミュニケーションの取り方を工夫する

お世話をする大前提として、愛情を伝えることが大切です。

ハグなどのスキンシップでコミュニケーションを取ることは、言葉の意味をすべて理解するのはまだ難しい子どもが、確実に愛情を受け取れる方法です。

そのうえで、言葉でのコミュニケーションを取ることも大事なので、わかりやすい言葉で、ゆっくりと話すことを心がけましょう。

急いで話すと聞き取りにくいだけでなく、怒っているような雰囲気になりがちです。
つい早口になってしまう人は、意識して話すスピードを落として、やわらかい口調になるよう心がけましょう。

ケガをしないよう目を離さない

1歳頃はひとりで歩けるようになる子どもがいる時期ですが、まだ安定して歩けないので転んでケガをしてしまうことが多いです。

特に外では興味を引くものがあると自由気ままに行ってしまうので、目を離さないようにしましょう。
車や自転車が走っている場所では必ず手をつないで離さないことも大切です。

また、家の中で転んだときのケガを防ぐために、テーブルなどの硬い角は柔らかいもので覆う、床にはマットを敷いておくなどしましょう。

滑りやすいもの、つまづきやすいものを床におかないこともケガの防止につながります。

さらに、子どもたちが集まる場では、お互い体のコントロールが難しいため、ぶつかってしまったり、言葉のコミュニケーションが不十分で喧嘩になったりと、トラブルが起きやすいです。

それを防ぐためにも大人は目を離さず見守るようにしましょう。

予防接種と場合によっては1歳児健診を受ける

お世話というより、病気から子どもを守るために必ず受けておきたいのが予防接種です。
1歳を迎えたら、子どもの健康のためにも、4種混合ワクチンを忘れずに接種しましょう。

ワクチンはほとんどの地域で無料接種を実施しています。
お住まいの自治体の公式ホームページなどで確認してみましょう。

なお、1年後には5種混合ワクチンへ変更する必要があります。

また、1歳のうちに受ける義務のある健診は「1歳6ヶ月児健診」ですが、身体の成長や、運動能力、言葉の発達が著しい1歳の時点でも健診を受けておいて損はありません。

育児についての相談もできるのでおすすめです。

ただし、1歳児健診は義務ではないため、お住まいの自治体で実施していない場合は自費になります。
その場合は健診が受けられるか小児科に確認してみましょう。

窒息したときの対処法をおさえておく

1歳になると、いろいろなものを手づかみできるようになり、成長の一環として自然に口へ持っていくようになります。

口より小さい6mm〜2cmほどの大きさのものを口に入れてしまうと、喉の狭い子どもが詰まらせ、窒息してしまう可能性があります。

大人のように吐き出したり飲み込んだりする力が足りないため、とにかく喉に詰まりそうなものを手の届く場所に置かないことです。

子どもが口に入れがちなものはおもちゃですが、飴玉やピーナッツなどの食べ物も要注意。

まさか口にするとは思わないようなボタン電池や硬貨なども、目を離したすきに口へ入れ、詰まらせてしまうことがあるので、危険なものはきちんと片づけましょう。

もしも、子どもが以下のような状態になっている場合は、窒息を起こしている可能性があります。

窒息の可能性がある状態
  • 苦しそうに呼吸をしている
  • 声を出さない
  • 喉を押さえている
  • 顔色が急に青くなっている

窒息を起こすと、多くのケースで

【3~4分後】顔が青紫色に変化

【5~6分後】呼吸停止、意識喪失、心臓停止、大脳障害発症と、症状が悪化

【15分超】脳死状態へ

という経過をたどります。

一刻を争うため、早急に救急車を呼び、速やかに以下のような応急処置を行いましょう。

【1】背中を叩く(背部叩打法)

①片手で乳児の体を支え、その手のひらで乳児のあごを固定する

③もう一方の手のひらのつけ根で乳児の背中を叩く

※5~6回を1セットで行う

【2】腹部突き上げ法(ハイムリック法)

 

①背後から両腕を回す。

②片方の手を握りこぶしにし、子どものみぞおちの下に当てる

③もう片方の手をその上に置き、両手で腹部を上に向かって圧迫する

【1】か【2】のいずれか、実施しやすい方を繰り返し行い、それでも詰まったものが出ない場合は、もうひとつの方法に切り替えて繰り返すということを続けましょう。

いざというとき、冷静に対処できるように、消防署などで講習会を行っている場合があるので、受講しておくと安心です。

1歳児の健やかな成長をサポートしよう

見た目だけではなく、できることが増える面でも、赤ちゃんから子どもへの成長を感じられる1歳の時期。

できることが増える分、ケガにつながるシチュエーションも増えるため、親御さんをはじめ、周りの大人は目を離さないようにしましょう。

また、お子さんを病気から守るために、ワクチン接種へ連れて行くことも大人の役目です。
さらなる成長につながる食事にも気を遣いながら、健やかな成長をサポートしましょう。

    #1歳 #1歳の成長 #1歳の発達

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