2歳頃は、さまざまなことができるようになる時期です。
筋力・体力がアップし、記憶力や思考力も向上、社会性が身につき、言葉も増えていきます。
そして、自我が芽生え、何でも自分でやりたがる「イヤイヤ期」を迎えるのも2歳児の特徴です。
この記事では2歳児の成長や発達、イヤイヤ期に関して詳しく解説していきます。
白井 沙良子
慶應義塾大学医学部 卒業 / 小児科医として、都内クリニックにて勤務
株式会社Kids Publicにて、小児科・産婦人科へのオンライン医療相談を運営 / 毎日新聞「医療プレミア」にて毎月連載
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【2歳児】発達段階の特徴
2歳児は心身共に目に見えてわかる成長をみせます。
この時期の発達段階について一般的な特徴をみていきましょう。
記憶力と思考力がアップする
2歳は記憶力が伸びる時期です。
特に怖かったり楽しかったりするような、インパクトのあることはよく覚えています。
苦手な虫が出たところに近づくと嫌がったり、パパが公園へ行くときによく着る服へ着替えると、「ぼくも!」とついていこうとします。
また、この頃は思考力も培われていきます。
「あれはなに?」としきりに聞かれる時期を過ぎると、今度は「なんで?」「どうして?」と聞かれることが増えていくでしょう。
まずは「わからないもの」の正しい名前を知っていき、次には「自分で考えてもわからないこと」を知っていこうとするのです。
大人は「なんで?」と聞かれたら、まずは子どもと同じ目線になって、一緒に考えるようにしましょう。
筋力・体力が上がる
2歳になると、からだがぽちゃっとした赤ちゃん体形から、しゅっとした幼児体形になっていきます。
2歳児の身長・体重の目安は以下の通りです。
男の子 2歳~2歳6ヶ月未満 | 男の子 2歳6ヶ月~2歳12ヶ月 | 女の子 2歳~2歳6ヶ月未満 | 女の子 2歳6ヶ月~2歳12ヶ月 | |
---|---|---|---|---|
身長(cm) | 81.1~92.5 平均値86.7 | 85.2~97.4 平均値91.2 | 79.8~91.2 平均値85.4 | 84.1~96.3 平均値89.9 |
体重(kg) | 10.1~14.6 平均値12.0 | 10.9~16.0 平均値13.1 | 9.3~13.7 平均値11.4 | 10.2~15.2 平均値12.5 |
さらに、2歳になると、筋力と体力が向上するため、ダイナミックに動けるようになります。
子どもたちは以下のようなことができるようになるでしょう。
- 走る、とび跳ねる
- ボールを投げる、蹴る
- 手を使わず階段の上り下り
運動能力が上がると、必然的に動く範囲も広がります。
すると、ボールを追いかけて道路に飛び出してしまうようなことも起きてくる可能性も出てきます。
ただでさえ、注意力が散漫な時期であるうえに、夢中になると周りが見えなくなってしまいます。
子どもを危険な目に遭わせないために、大人が注意を払うようにしましょう。
社会性を身につける
2歳児は集団生活の中で社会性を身につけていきます。
子ども同士の関わりが増える中で、ほかの子どもたちに興味を持つようになり、言葉を交わして遊ぶうちに、一緒に同じことをすることに喜びを感じるようになります。
子どもたちだけでは、なかなか遊ぶまでに至らない場合は、まずは大人も一緒に遊ぶと、じきに子どもだけでも遊ぶようになるでしょう。
なお、「おもちゃをとられた!」など、子ども同士のトラブルが起こることもあります。
その際は、とった側を一方的に叱るのではなく、双方の話をしっかり聞いて、その気持ちに同意するようにしましょう。
2歳児ができること
2歳児ができるのはどのようなことでしょうか。
確認してみましょう。
お絵かきや切り貼り
それまでは、お絵かきといっても、ぐちゃぐちゃと線を描いているだけだった子どもが、2〜3歳頃にかけて丸を描けるようになっていきます。
きれいな丸ではなくデコボコしていたり三角だったりしますが、子どもに聞いてみると、パパやママの顔と答えることも。これは大きな成長です。
まだ、言葉が巧みな時期ではないので、気持ちが絵に現れることもあります。
クレヨンやペンなど描きやすいものと紙を用意して、いつでもお絵描きができるようにしておくとよいでしょう。
また、2歳くらいになると指の力が強くなるので、ハサミを使って紙を切ることができるようになります。
切った紙を貼って何かを作ることも楽しみます。
これらの遊びを通じて、創造力や表現力を養うだけでなく、手先の器用さや集中力も鍛えられるでしょう。
トイレトレーニングをはじめる
2〜3歳の頃にはじめることが多いのがトイレトレーニングです。
トイレトレーニングをはじめる前に、まずは、「トイレ」さらには「おしっこ」「うんち」という言葉が指すものを子どもが理解しているか確認しましょう。
トイレについて知り、興味を持ってもらうために、実際のトイレや、トイレにまつわる絵本、動画を見せるのがおすすめです。
そうして、トイレを使ってみたいという気持ちが子どもに芽生えたときに、トイレへ誘いましょう。
誘うタイミングは、朝起きたとき、ごはんの前後、お出かけ前などにして、それぞれの時間を大体決めておきます。
おまるや補助便座に座る練習をして、おしっこやうんちが上手にできたときは思いきり褒めましょう。
それを繰り返しているうちに、おむつにおしっこやうんちが出たことを認識するようになり、やがて出る前に「おしっこ」「うんち」と言うようになります。
おむつをはずしてパンツにすると、濡れたときの不快感が嫌で、自らトイレに行くようになるはずです。
言うのが間に合わなかったり、うまくトイレで排泄できなかったりすることがあっても、叱らず、子どものペースに合わせて進めていきましょう。
トイレに行くタイミングが決まり、上手に排せつできるようになっておくと、幼稚園に通うようになったとき、子どもがトイレのことで苦労せずに済みます。
保育園でもトイレトレーニングを行う場合があるので、家庭でのトイレトレーニングの状況を共有しながら進めると、スムーズにいくでしょう。
2歳児は言葉を理解し、会話ができる
2歳になると、さまざまなことができるようになりますが、言葉に関しても急速に成長します。
単語をたくさん覚え、「わんわん、すき」などと単語を2つ、多いと3つ組み合わせて話すようになるのはこの頃です。
「お名前は?」と聞かれたら、きちんと自分の名前を答えられるなど、簡単な会話もできるようになります。
また、少し長めの話でも理解して、最後まで聞いてくれるようになる時期です。
そのため、叱るときは「ダメ」と一言で済まさず、「前を向いて歩かないと、危ないからダメよ」のように、説明をつけ加えるようにしましょう。
「かわいいお花だね」「大きい雲だね」と、普段から形容詞をつけて話すようにすると、子どもはどんどん新しい言葉を自分のものにしていきます。
絵本の読み聞かせをしたり、一緒に歌ったりすると、そこからも言葉を身につけていくでしょう。
言葉が遅い?あまり話さないときはどうする?
2歳児の言葉の発達は個人差が大きいという特徴があります。
そのため、周りの子と比べて遅れているように感じても、心配し過ぎる必要はありません。
ただし、言葉が遅れている要因が以下の可能性があるなら、小児科や発達支援センターなどで相談することをおすすめします。
- 聴覚に問題がある(音声を聞くことで言葉を獲得できないため、言葉が遅い)
- 発達障害(自閉スペクトラム症の場合、言葉の遅れが見られるケースがある)
このほか、安心して話せる環境ではない、性格的に「人に伝えたいと思うことが少ない」といった理由で、あまり話さず、言葉が遅れる場合もあります。
言葉が遅いかもしれないと気になるなら、子どもが安心して話せる環境を整えましょう。
一緒に遊ぶときは、子どもの嬉しい気持ちや嫌な気持ちを汲みとって、「上手だね」「これはイヤだね」といった声かけをすることが大切です。
自分の気持ちをわかってくれる人がいる環境だとわかれば、子どもは安心して言葉を話せるようになるはずです。
また、言葉を発したくなるような、五感を刺激する体験を子どもができるようにすることも有効でしょう。
いろいろな体験をする中で、興味を持てることに出会ったときは、抱いた感情を言葉にしてくれるでしょう。
「魔の2歳児」イヤイヤ期とは?
2歳頃になると、何でも自分でやりたがったり、指示をすると「イヤ!」と拒否したりすることが多くなります。
これがいわゆる「イヤイヤ期」で、ピークを迎える2歳児は「魔の2歳児」と呼ばれることもあります。
しかし、イヤイヤ期はお子さんに「自我」が芽生え、いつも一緒にいるお母さんも、自分とは別の存在であることを意識するようになる、大切な時期でもあるのです。
イヤイヤ期の特徴をまずは確認しましょう。
自分でなんでもやりたがる
イヤイヤ期を迎えた2歳児は、自分でなんでもやりたがるようになります。
これは、自分の意思を主張することで、自分の存在を確認しようとしているためです。
まだ親の手が必要なことでも、自分でなんでもやりたがり、やりたいことを押し通そうと自己主張したりします。
「時間がないから今はダメ!」と、やらせないようにすると、癇癪(かんしゃく)を起こして泣き喚くこともあり、どうすればよいか途方に暮れる親御さんは多いでしょう。
指示されるのを嫌がる
第一次反抗期ともいわれるこの時期は、親御さんから指示されることをことごとく嫌がります。
自分の行動を決めるのは自分でなければ気が済まないので、お腹が空いていたとしても、「ごはんを食べなさい」と言われると、「イヤ!」と拒否するのです。
「前は素直に言うことを聞いてくれていたのに、なんで?」「こんなに反抗されるなんて、どこかで子育ての仕方を間違えた?」と思う親御さんもいるかもしれません。
イヤイヤ期にどう対処する?育児のポイント
イヤイヤ期におさえるべき育児のポイントは、子どもの気持ちに共感することです。
2歳児は自分の気持ちを言葉で表現することがうまくできません。
イヤイヤがはじまったら、怒鳴ったり、無理にやめさせるのではなく、「イヤだったね」とまずは共感します。
そして、子どもの気持ちが落ち着いたら、どういうところが嫌だったのか聞いてみましょう。
その際、子どもが一生懸命気持ちを伝えようとしているのに、大人が決めつけで理由を話してしまってはなりません。
自分のことは自分でしたい時期なので、焦ることなくお子さんが話してくれるのを待ちましょう。
また、注意点として、子どもが自分でやろうとしていることを、大人が先回りして言ったり、やってしまったりするのは避けましょう。
自分からお箸を使って食べようとしていたのに、「お箸を使うのよ」と言われてしまったら、「イヤだ!」と子どもは反抗したくなってしまうでしょう。
子どもが自分で服を着ようとしているところを、時間がないからと手伝おうとしたら、イヤイヤがはじまることもあるはずです。
子どもが上手くできなくてじれったくても、自主性を尊重し、見守りましょう。
見本を見せるというやり方でお子さんをサポートするのはOKです。
もしも危険をともなうことしようとしているなら、しつけとして「やめなさい!」だけではなく、なぜ危険なのかをわかりやすく説明するようにしましょう。
子どもが癇癪を起こすと、お菓子を食べさせてご機嫌をとろうとする人もいるかもしれません。
ですが、癇癪を起こすとお菓子がもらえると思ってしまうのでやめましょう。
さらに、この時期は歯磨きをされるのも嫌がるので、虫歯の原因になりかねません。
イヤイヤ期を通して、子どもは自分の思い通りにならないことや、やってはいけないこと、ルールがあることを知っていきます。
それは社会性を身につけるうえで重要なことです。
イヤイヤ期は育児の仕方を間違って起こるものではなく、ずっと続くものでもありません。
お子さんの成長過程だと受け止めて、「終わった後にどんな成長がみられるか楽しみ!」くらいの心持ちで向き合いましょう。
3歳児の発達と成長
さまざまな面で発達と成長を遂げる2歳児を見ていると、それより先はどのような変化を見せるのか気になるところでしょう。
ちょっと先の3歳児に見られる一般的な発達と成長は以下の通りです。
- つま先立ちをして歩ける
- 後ろ歩きができる
- 三輪車を漕げる
- サイズを比較できる
- ごっこ遊びができる
- 接続詞や助詞を入れて話せる
- 自分がしたいことを認識して願望を言う
- こぼさず食べたり着替えたりできる
- 他人の気持ちを考えられるようになる
このような発達や成長は個人差があるので、「3歳になったのにできない」と気にしすぎることはありません。
しかし、同じ年齢の子どもとの差が大きいと感じるなら、小児科などで医師に相談してみましょう。
「魔の2歳児」は成長するための大事な過程
2歳の頃は、筋力や体力が上がって、ダイナミックな動きで遊ぶようになったり、簡単な会話ができるようになったりと、成長が目に見えてわかる嬉しい時期です。
一方で、イヤイヤ期がはじまり、癇癪を起こす我が子を前にして、怒鳴ってしまいそうになるのを抑える毎日に疲れてしまう親御さんもいるでしょう。
ですが、魔の2歳児を乗り越えると、また新たな成長を子どもたちは見せてくれます。
「イヤイヤ」を無理にやめさせるのではなく、寄り添って、理解して、気持ちを広く持って見守ること。
それが大人には求められます。
イヤイヤ期が終わって、ほかの子どもたちと楽しそうに遊んでいる姿を見れば「大変だったけど、イヤイヤ期があったから、この子はこの子らしく成長できたんだな」と思えるはずですよ。
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