産後、母乳の出方に悩むママは多くいます。
母乳が出ない原因は、授乳回数の不足、ストレス、栄養不足などさまざまです。
この記事では、母乳が出ない原因を解説し、助産師が教える母乳分泌を促すための具体的な方法を紹介します。
母乳が出ないことで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
助産師として、大学病院、助産師学校教員、厚生労働省母子保健課、公益社団法人日本助産師会事務局長等を経て現職。産後ケアをはじめ女性の生涯の健康支援活動、子育て相談等に携わっている。
市川先生の監修した記事一覧
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【先輩ママに調査!】母乳はいつ頃から出た?
初産で母乳が出た人は約9割!
出産経験のあるママ100人に、初めての出産後の母乳の出方についてアンケート調査を行いました。
その結果、約7割の方がスムーズに母乳が出たと回答し、残りの約2割の方は時間がかかったものの母乳が出たと回答しました。
つまり、約9割のママが初産で母乳育児を経験したことがわかります。一方で、約1割のママは母乳が出ず、ミルク育児を選択せざるを得なかったという結果になりました。
母乳が出たのは産後2日〜1週間の人が最多!
続いて、『母乳が十分に出始めた時期』についてアンケート調査を行いました。
その結果、「産後2日〜3日」が32人で最多、次いで「産後1週間頃」が29人でした。
「産後すぐ」と回答した方は4人しかおらず、半数以上の人が産後2日〜1週間程度で十分に母乳が出始めていることがわかりました。
母乳が出ないのはなぜ!?母乳が出るメカニズム
アンケート結果が示すように、母乳は産後すぐに出るわけではありません。
ここでは、その理由を母乳が出るメカニズムとともに詳しく解説していきます。
母乳が生成されるメカニズム
妊娠中は、胎盤からプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンがたくさん分泌されています。
それと同時に、母乳の生成を促すプロラクチン(乳腺刺激ホルモン)の分泌も増加しますが、プロゲステロンには母乳の分泌を抑える働きがあるため、妊娠中に母乳はほとんど出ません。
出産して胎盤が排出されると、プロゲステロンの分泌量が急激に減少し、母乳の分泌が始まります。
しかし、プロゲステロンの分泌が減ったからといって、すぐに多量の母乳が出るわけではありません。母乳の生成を促すプロラクチンは、何もしないと出産をピークに減少していくからです。
そこで大切なのが、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうこと。
赤ちゃんがおっぱいを吸うと、ママの脳にその刺激が伝わり、母乳を作り出すホルモン(プロラクチン、オキシトシン)が分泌されます。
これらのホルモンの分泌によって、母乳はやっと分泌されるようになります。そのため、産後母乳が出るようになるまでには少し時間がかかるのです。
母乳(おっぱい)が出ない原因
母乳が出始める時期には個人差があるため焦る必要はありません。
ただし、なんらかの要因により母乳が出にくくなっている場合もあります。ここでは、母乳が出ない特徴や代表的な原因を5つ紹介します。
疲労やストレス
疲労やストレスがあると母乳を出すオキシトシンの分泌量が減ったり血流が悪くなったりして、母乳が出にくくなります。産後は出産によるダメージ、赤ちゃんのお世話、環境の変化などによって、心身の疲れやストレスを感じることが少なくありません。
特に昼夜問わずの頻回授乳や、赤ちゃんのお世話によって睡眠不足となり、疲労やストレスが溜まっている場合もあります。
水分・栄養不足
母乳の約80%は水分で、他にもたんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、免疫物質など赤ちゃんに必要な栄養素が含まれています。
母乳は、ママが普段食べている食事から作られます。そのため、ママが水分や栄養を十分に摂っていないと、母乳の量が減ってしまう場合があります。
授乳回数が少ない
赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激により、母乳を作り出すホルモン(プロラクチンとオキシトシン)が分泌されます。
授乳回数が少ないと、これらのホルモンの分泌が減少し、母乳が出にくくなります。
無痛分娩による影響
オキシトシンは子宮を収縮させて陣痛を促す働きがあり、人工的に陣痛を起こす陣痛促進剤として活用されています。
無痛分娩でオキシトシンを含む陣痛促進剤を使用した場合、体内で生成されるオキシトシンが減少して母乳が出にくくなることがあります。
<他にもある!母乳が出にくいケース>
- 胎盤や卵膜の一部が子宮に残っている(胎盤遺残)
- 分娩時に多量出血をした
- 糖尿病・内分泌疾患などの持病がある
- 乳頭の手術歴がある
- 肥満(BMI30以上)である
- 喫煙している
上記に該当し、かつ母乳が出ない場合は、医師に相談するようにしましょう。
母乳の分泌量を増やすためにやるべきこと
母乳が出ない、量が少ない場合は、母乳の分泌量を増やす方法を試してみましょう。
ここでは、母乳の分泌量を増やすおすすめの方法を6つ紹介します。
出産後は出来る限り早く授乳を開始する
産後は母乳の分泌量が少ないですが、出来る限り早く授乳を開始して刺激を与えることが大切です。
ママと赤ちゃんの体調に問題がなければ、産後30〜60分以内に授乳を開始しましょう。出産直後なので、授乳は助産師にサポートしてもらいながら行います。直接的な肌と肌のふれあいが、その後の授乳をスムースにしてくれます。
授乳回数を増やす
赤ちゃんに吸ってもらうと母乳が出やすくなるため、授乳回数を増やしてみましょう。
医療的に問題がなければミルクを足さずに、赤ちゃんが欲しがったら母乳をあげるのがおすすめです。
プロラクチンの分泌を増やすには、2〜3時間ごとの授乳が理想です。夜間はプロラクチンの分泌が増えるので、夜もできるだけ授乳間隔を保ちましょう。
乳頭・乳輪をマッサージをする
以前は、母乳分泌を促すために妊娠中や授乳中に「おっぱいマッサージ」を行うことが一般的でした。しかし、現在では妊娠中や産後に乳腺を刺激するマッサージは推奨されていません。
むしろ、マッサージによって乳房の緊満を招き、トラブルを引き起こす可能性があるため注意が必要です。
マッサージを行う際は、乳頭・乳輪に限定することが重要です。
乳頭・乳輪を柔らかくほぐすことで、赤ちゃんがよりおっぱいを咥えやすくなり、授乳による乳首の切れや痛みを予防することができます。
【乳頭・乳輪マッサージのやり方】
目安:指が白くなる程度の強さで、1回の圧迫は通常3秒程度、全体で1~2分程度
- 片方の手を乳房に添えて、もう片方の手の親指・人差し指・中指で乳首をつまみ、乳頭全体を圧迫する
- 指の位置を変えながら、横方向、縦方向に揉みほぐす
マッサージをする際は、自己判断でのマッサージは避け、医師や助産師に適切な開始時期や方法を相談してから行いましょう。
乳輪まで深く吸わせる
母乳が出ないときは、授乳方法も見直してみましょう。
新生児期の赤ちゃんは乳頭の先を咥えやすいため、母乳は出ているものの、上手に飲めていない場合があります。乳輪まで深く咥えさせてあげると良いでしょう。
身体のコンディションを整える
産後はゆっくり休む暇がなく、疲れやストレスが溜まりやすくなります。周りのサポートを受けて休息する時間を作る、赤ちゃんが眠っているときはママも休むことを意識しましょう。
また、こまめに水分を摂取し、1日3食栄養バランスのとれた食事をとることも大切です。
血液循環を良くする
血行が悪いと乳腺に血液が行き届かなくなり、母乳が作られにくくなります。
産後は体が冷えやすく、筋肉が硬くなりやすいため、血行が悪くなりがちです。以下のような方法で、血液循環を良くしましょう。
- 温かい食べ物や飲み物を摂取する
- ストレッチや産褥体操をする
- 腹巻きやレッグウォーマーなど防寒アイテムを使用する
- 足湯をする
先輩ママ直伝!『母乳を出すために工夫したこと・効果があったこと』
出産経験のあるママたちに『母乳を出すために工夫したことや効果があったこと』についてアンケート調査を行いました。
先輩ママたちの体験談を参考にしましょう!
「とにかく我が子に吸ってもらっていました。一日十数回~二十回ほど、もはや一日中と言えるほど吸ってもらっていたら良い刺激になったようで、溢れるほど母乳が出るようになりました。」
「食べ物に注意、工夫をした(冷たいものをとりすぎない、根菜類を蒸し料理にして食べる、脂っこいものを避けるなど)」
「出なくても、赤ちゃんに吸わせてました。それでも足りなかったので、母乳とミルクの混合でした。一つアドバイスをするとしたら、途中で諦めかけてしまうと出る量が減って、また頑張って頻度を増やしてもなかなか増えないので、最初から諦めないことが大事です」
「水分を多くとるようにし、夏だったが温かいノンカフェインのお茶等を摂取していた。」
母乳が出る仕組みを理解して母乳の分泌量を増やそう!
母乳の出方は個人差が大きく、産後すぐは少なめでも、2〜3日頃から徐々に増えていき、1ヶ月ほどで安定してくることが多いです。
母乳は、赤ちゃんが吸う刺激によって分泌が促されるため、こまめな授乳やマッサージが効果的です。
しかし、なかなか母乳が出ない場合でも、自分を責める必要はありません。
母乳が出ない原因はさまざまです。まずは、母乳の分泌メカニズムや、考えられる原因について理解を深めてみましょう。
それでも心配な場合は、一人で悩まずに、助産師さんや、地域の保健センターなどに相談してくださいね!
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